日本マイクロソフト、社長交代決めた理由 グループきっての優等生にもかかわらず

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北海道出身で父は日本人、母は米国人というルーツを持ち、「日本語も英語も完璧」(樋口社長)。高校まで日本で過ごし、米国の名門校ブリガムヤング大に進んだ。会見で「外見と名前が合いませんね、と良く言われますが、北海道生まれの道産子です」と笑いを誘った平野副社長。その一方で、表情を引き締めて「(現社長から)しっかり踏襲していきたい」と強調したのが「日本に根付き、日本に信頼される会社」という経営方針の引き継ぎだ。

2008年4月に就任した樋口社長は、2011年2月に社名を「日本マイクロソフト」に変更、製品やサービスに高い品質を要求する日本市場で着実にビジネスを拡大し、内外で日本法人の存在感を高めた立役者だ。2014年6月期決算では過去最高の売上高を達成。米国やドイツ、フランスなどの先進6カ国の中で最優秀の業績を上げたとして、日本法人は過去4年間で3回、グループ内で表彰されるなど、経営手腕への評価は高い。

 日本の政財界での地位向上目指す

にもかかわらず今回、会長の座を設け、社長を別に置くことには、米本社に歩調を合わせてのクラウド、モバイル事業を強化する以外にも理由がある。

それは、今まで活動が手薄だった日本の政財界での地位向上と、それを通じた事業への相乗効果を生むことだ。「これまで感じていたことだが、一人で外の仕事と中の仕事と、両方やるのは大変だった」(樋口社長)と振り返ったうえで、会長就任後は、「これまで必ずしも出来ていなかった財界や政府への影響力の向上」などを実現したいと表明。「オリンピックを始めとする社会貢献など、平野(次期社長)が拾いきれないプロジェクトを拾っていく」と力を込めた。

社長と会長が並び立つ体制には、役割分担のメリットと裏腹に、リーダーシップが分散するリスクもある。6月末までは、平野副社長が部下として樋口社長に報告を上げる立場だが、新体制ではそれぞれが並列的にグローバル統括役員の配下となる。目標とするクラウド、モバイルへのシフトをやり遂げて、これまでのように成長を続けられるのか。2人が密接な連携を保てるかが重要なカギになる。

山田 泰弘 東洋経済 記者

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やまだ やすひろ / Yasuhiro Yamada

新聞社の支局と経済、文化、社会部勤務を経て、2014年に東洋経済新報社入社。IT・Web関連業界を担当後、2016年10月に東洋経済オンライン編集部、2017年10月から会社四季報オンライン編集部。デジタル時代におけるメディアの変容と今後のあり方に関心がある。アメリカ文学、ブラジル音楽などを愛好

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