個人投資家はアメリカ株下落にどう対応すべきか 「難しい10月相場」をどう乗り切れば良いのか

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これらを市場の材料として見ると、まず9月調査日銀短観では、大企業業況判断DIの予想は製造業が11となっている。これは6月調査の9より2ポイント上昇、非製造業は13で6月と同じだ。また、全産業の設備投資は前年度比18.9%増で、6月の18.6%増から伸びる。日本市場にとってはプラス材料となりうる。

一方、アメリカの9月雇用統計の予想は、非農業部門の雇用者数が25万人増、失業率3.7%、平均時給が前年同月比5.2%増と、8月の数字に対して伸びは一服するものの、なお高水準だ。

また、ISM製造業・非製造業景況感指数については、製造業が52.8で8月と同じ、非製造業が56.5と8月の56.9から4ポイント低下すると予想されている。雇用統計と同様に伸び一服ながら、やはり高水準だ。ただ、極めて狭いレンジの「程よく悪い」数字が要求される今のNY株にとっては微妙で、結果に対して市場がどう反応するか不透明だ。

10月の大きなイベントであるノーベル賞は、もちろん期待はあるが、日本関連で受賞があったとしても、関連個別株への反応だけであろう。個別株人気の相場には、多少はプラスかもしれない。

さらに、中国国慶節の休場については、もしグローバルファンドがアジア株に対して何らかの投資行動に出る場合、中国の変動分が日本株にも影響を与えることが考えられる。これはプラスでもありマイナスでもある。

アメリカ株の底入れを待ち、売られても慌てずに

指標面で見ると、日経平均株価の予想PER(株価収益率) が11倍台に落ちてきたが、最近では「11倍台は買い場」となっている。

ただ、信越化学工業などが年初来安値を更新したように、最近の「TOPIX(東証株価指数)コア30銘柄」の下げが厳しい。これは多くのグローバルファンドに日本株アナリストがおらず、TOPIXコア30を買って日本株の組み入れとしているところが多く、NY株の弱気転換を受けて「合わせ切り」で日本株を売っているためだ。

ここまで下落すると、NY株が下値に届くまで本格的な上昇は難しい。そのNY株だが、11月のFOMCでの0.75%の利上げは織り込んだが、先の長い利上げ相場(逆金融相場)を考えると、買いを急ぐことはないというのが市場の趨勢だ。

しかし、S&P500種指数を構成する銘柄の業績予想は、増益率こそ低下しているが、減益になるわけではない。日本株も同様で、いつまでも下げ続けることはない。10月相場は、まずは「売られて泰然、買われて浮かれず」で乗り切ろう。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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