円よりヤバい「ポンド急落」でイギリス大わらわ 英新首相「減税の大ばくち」で経済は大混乱

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27日にリバプールで開かれた党大会で、労働党のキア・スターマー党首は次のように宣言した。保守党は「再分配を支持しないと言っているが、実際には支持している。(彼らが支持しているのは)貧困層から富裕層への再分配だ」。

ユーガブの最新世論調査で労働党の支持率は保守党を17%上回った。過去20年で最大のリードを築いた形になる。対する保守党の支持率は28%でしかなく、既存の議席を維持できるか疑問視されるようになっていると、前出のベール氏は言う。

こうした厳しい政治環境によって、トラス氏が直面する課題は一段と込み入ったものになっている。企業投資の促進という減税で狙った効果を引き出すには、2年後に政権交代が起きて政策が覆されることはない、といった安心感が企業の間に広がる必要があるとエコノミストらは指摘するが、トラス政権の存続は早くも危ぶまれている。

頑迷な政策が招く信用失墜

短期的には、トラス氏とイングランド銀行(中央銀行)の対立が一段と深まる可能性が高い。イングランド銀行は11月に開催する次回会合で追加利上げを行うとの見方がすでに広まっているが、そうした中で同行チーフエコノミストのヒュー・ピル氏は27日、政府の新たな財政政策により「かなりの金融政策対応」が必要になるだろうと述べた。

かつてイングランド銀行で金融政策委員を務めたアメリカの経済学者、アダム・ポーゼン氏は「政府の政策はとんでもなく無責任なだけでなく、中央銀行が大幅な利上げで対処しなければならなくなることを理解していないように見える」と話す。

ピーターソン国際経済研究所の所長であるポーゼン氏は、イギリスに対する市場の信用失墜を、1970年代のイギリスやその他のヨーロッパ諸国、1980年代のラテンアメリカ諸国が直面したそれになぞらえる。最も望ましいのはトラス政権が財政政策を転換することだが、トラス氏とクワーテング氏は「現在の策に固執している」ように映る、と同氏は言った。

(執筆:Mark Landler記者)
(C)2022 The New York Times

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