反EUの「英国独立党」、誰が支持しているのか 党大会開催の海岸の町で市民に聞く

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英国独立党の党大会で演説をするファラージ党首

党大会初日の午後4時過ぎ。メイン・ホールの舞台の幕から、ファラージ党首が登場した。場内から割れんばかりの拍手が起きた。舞台前に報道陣がカメラ片手に群がった。カメラのフラッシュが止まないので、ファラージ党首は数分に渡り、演説を開始できないままになった。

「キャメロン首相は(2010年の)政権発足時、移民純流入者数を年間10万人規模に減少させると言いました。記録を見てみましょう」。前日に政府が発表した数字によれば、昨年1年間で英国への移民純流入者数は29万8000人になったとファラージ氏が言うと、大きな歓声が会場から立ち上った。「EUから離脱し、国境のコントロールを自分たちの手に取り戻すことで、私たちUKIPは英国民の多くが望むことを実現できるのです」。

ビザ取得にポイント制導入を訴えるファラージ党首

ファラージ党首は、英国もオーストラリアが採用しているポイント制度を適用するべき、と主張した。自分が持つスキルの程度などによってポイントを得て、一定数を獲得した後で、ビザが与えられる仕組みだ。

翌日、党大会最終日にも演台に登場したファラージ氏は「わが党はすべての人を歓迎します」、「私たちの誇りは愛国精神です」と述べ、会場を湧かせた。

UKIPが大きな注目を浴びたのは、2013年の地方選挙での躍進、2014年5月の欧州選挙での快挙だった。英国に割り当てられた73議席の中で、UKIPは24議席を獲得して第1党となった。EU脱退を目指す政党が最大政党となるという「ねじれ」的現象だった。UKIPの伸張ぶりをたかをくくってみていた主要政党に泡を吹かせた。

「長年、私たちはすべてのメディアに過小評価されてきました」、「さあ、もう一度、驚かせようではありませんか。変化を起こすために、そして政権をとるために多くのUKIP議員を当選させよう!」

UKIP自体の「変化」を示す象徴として、党首の前に壇上に上がったのは性転換者のケリー・マロニー党員であった。2004年、同氏(当時はフランク・マロニー氏)はロンドン市長選に立候補(落選)。ロンドン北部カムデンには「同性愛者が多いから、選挙運動をしたくない」と発言した。

「あれは軽蔑的な発言でした。同性愛者たちに謝罪します」。マロニー氏は党大会の聴衆にそう言って涙ぐんだ。マロニー氏が性転換者であることを公表したのは昨年夏である。UKIP党員たちは総立ちの拍手喝采となった。

BBCの報道によると、党大会が終わりに近づいた頃、反UKIPの抗議デモ参加者約250人がマーゲート駅近くの海岸沿いを行進した。UKIP側の行進者も50人ほどおり、2者は党大会の会場ウインターズ・ガーデン劇場前あたりで衝突した。ケント州警察によると「平和的な行進だった」が、きつい言葉の応酬があったという。

言葉の内容は明らかになっていないが、私自身も厳しい言葉をかけられた。初日の党大会終了後、参加者の何人かと駅までの道を歩いていると、男性がこちらに歩いてきて、通り過ぎるときに「ナチスの奴らめ!」と言い捨てた。

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