ウクライナ鉄道CEOが語る「日本人に望むこと」 戦時下の運行体制や戦略を単独インタビュー

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最初の質問はイノトランスの来訪目的。カムイシンCEOは「ウクライナ鉄道がEUの鉄道網の一部になるということをみなに知らせるためにやってきた。ドイツ鉄道と提携することでそれが実現する」と話す。

インタビューの前日にあたる9月21日、ウクライナ鉄道とドイツ鉄道はイノトランスの会場で業務提携覚書の調印を行った。調印式の席上でドイツ鉄道のリヒャルト・ルッツCEOは「ドイツ鉄道だけでなく欧州の鉄道会社や鉄道メーカーはみなウクライナ鉄道を支持する」と話した。今回の業務提携はウクライナ鉄道がロシアの影響から離れ、EU側についたことを明確に示したことになる。

ドイツ鉄道とウクライナ鉄道の業務提携調印式
ウクライナ鉄道とドイツ鉄道の業務提携調印式。ドイツ鉄道のルッツCEO(左)とウクライナ鉄道のカムイシンCEO(記者撮影)

ドイツ鉄道と提携、ロシアの影響排除

欧州における標準的な2本のレールの間の長さ(軌間幅)は標準軌と呼ばれる1435mmだが、ウクライナ国内における鉄路のほとんどは軌間幅が広軌と呼ばれる1524mmであり、軌間幅が異なることから欧州とウクライナの間を列車がそのまま行き来することはできない。一方、ウクライナ鉄道の軌間幅はロシアの鉄道の軌間と同じ幅である。もしロシアの占領を許してしまうと大量の武器や兵士が鉄道でロシアからウクライナに運ばれることになる。

「ロシアの影響を排除するためには、欧州の鉄道スタイルを導入することが最善の方法だ」とカムイシンCEOは話す。さすがにウクライナ国内のすべての線路の軌間幅をすぐに変えるわけにはいかないが、ドイツ鉄道との提携はその代わりとなるものだ。

では、提携の内容はどのようなものなのか。カムイシンCEOは「EU諸国とウクライナの軌間幅は異なるが、ドイツ鉄道の支援により貨物列車が走る主要路線については欧州とウクライナの間で貨物輸送が現在よりも容易になるシステムを構築する」という。どのような仕組みにするかはこれから検討するというが、「欧州の貨物列車によるウクライナへの乗り入れを念頭に置いている。同時に、より大型で多くの量を搭載できるウクライナの貨車が欧州諸国に乗り入れできるようなことも検討したい」。

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