トヨタ、日産、ホンダが直面する5つの課題 国主導の自動車産業戦略はどれだけ有効か

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次は「システム戦略」である。環境破壊や人命にかかわる事故など、クルマが抱えるネガティブなイメージの払拭や課題の解決には、単独の技術や単体の製品だけで取り組んできたが、今後は「システム」での取り組みを推進する必要があるという。

環境・エネルギー対応では、電気自動車(EV)から家庭に電力を供給する「V2H」(ビークル・ツー・ホーム)、高齢化社会に対応した自動運転システム、震災の教訓を生かした道路とクルマのネットワーク化などを想定している。

 二輪車やバス、トラックも手を抜くべからず

最後は意外なテーマ。なんと「二輪車、バス、トラック、フォークリフト、運搬用車両機器戦略」だ。クルマは乗用車を中心とする四輪車だけではない。ホンダ、ヤマハ発動機など日本の二輪車メーカーは、世界最強のブランド力と販売台数を誇る。

一方で、かつて高校生に二輪車を「買わせない」「運転させない」「免許を取らせない」という「3ない運動」の影響が色濃く残り、母国市場はさびしい限り。日本の二輪車市場は2013年で約46万台と、ピーク時の約8分の1にとどまっている。これを年間100万台に引き上げるべく、官民共同のキャンペーン展開に着手している。

日刊自動車新聞社が発行する『自動車産業戦略2014』(800円)に沿って、経産省と日本自動車工業会が後援するシンポジウム「自動車産業戦略2014から見えてくる未来のクルマ社会」は聴講料2000円、定員300人で3月17日開催。参加申し込みはこちら

2020年には東京オリンピックが開催される。公共交通機関としてバスの役割の重要性も増すだろう。戦略では燃料電池バス、電気バス、ハイブリッドバスなどの普及を目標として掲げるほか、これらの海外展開も拡大することを目指す。

同時に、交通インフラサービスの展開も促している。物流システムは社会インフラを構成する重要な要素。その機能を支える製品の機能や効率、付加価値の向上は、喫緊の課題であるドライバー不足の解消にも貢献する。

日刊自動車新聞社はこの戦略をテーマにしたシンポジウム「自動車産業戦略2014から見えてくる未来のクルマ社会」を、3月17日に東京・千代田区の有楽町朝日ホールで開催する。見どころは2本の基調講演。経産省自動車課の前課長である前田泰宏氏(現・政策評価広報課長)と後任であり、自民党・伊吹文明代議士の長男の伊吹英明氏が、それぞれ講師になる。

お役所の前任課長と現職課長が同席し、同じテーマで基調講演するのは、異例中の異例だ。経産省がこの戦略にかける期待が大きく、自動車産業が日本経済の根幹を握っている証左ともいえそうだ。

小口 博志 日刊自動車新聞 総合デスク兼編集委員

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