シャープ、赤字転落で金融支援を要請へ リストラを伴う再建計画の実現性がカギ

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縮小

仮にシャープがDESを銀行に提案し、受け入れられれば、シャープにとっては借り入れが減って金利負担も和らぎ、本業回復にはつなげやすくなる。さらに「将来への安心から、第三者割当増資を実施しても、ニューマネーが入る可能性も高まる」(国内証券クレジットアナリスト)。

ただし、銀行側にとってDESは1株当たり利益の希薄化を招き、株価下落のリスクを背負う。そのリスクをカバーするだけの具体的な再建シナリオが不可欠だ。主力行関係者は「融資先から金融支援を求められても、『はい、わかりました』とはならない。再建計画の実現性が大前提」とクギを刺す。

事業ポートフォリオの見直しが必須

そこでカギとなるのが、事業ポートフォリオの見直し。シャープの本質的な課題は、現状の事業ポートフォリオ自体の収益基盤の脆弱さにあるためだ。

収益基盤の改善に向け、事業縮小の見方がくすぶるのが太陽電池事業だ。2013年度こそ米国のソーラープラント建設事業が収益を押し上げたが、その大口受注が剥落した2014年度は赤字の見通し。今後主戦場とする国内市場では、電力買い取り価格の減額や中国勢の躍進など、逆風が吹きつける。

一方、電子部品事業も縮小の見方がくすぶる。液晶バックライト用のLEDデバイスが価格下落に襲われるなどし、今期は期初の営業利益150億円の計画を30億円に下方修正。シャープ側は未定としているが、広島の計5工場のうち4工場の閉鎖も噂される。

DESによる資本増強で、工場閉鎖など事業縮小につなげれば、再建の足かせは部分的には減ることになる。ただし、工場閉鎖は人員削減という痛みを伴い、経営陣にとっては重い決断となる。シャープと主力2行の具体的な話し合いはこれから。5月発表予定の新しい中計に、どんな再建シナリオを盛り込むのか。シャープの修羅場は続く。

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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