日経平均、「1万9000円」の大台を前に足踏み 株高材料に「いびつ」さも

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これまでのアベノミクス相場とは異なり、日本株と円安の相関性が低下していることについて、ゴールドマン・サックス証券ストラテジストの建部和礼氏は、1)円安による増益効果が徐々に減衰、2)市場の評価も低下、3)コーポレートガバナンスなどミクロ材料が注目されている──ことなどがあると指摘する。

GSの推計では、2012─13年度は対ドルでの10円の円安進行で8%ポイントの営業利益成長率の押し上げ効果があったが、14年度では6%ポイント、15─16年度では4%ポイントに下がる。市場でも円安による増益よりも「本業」での増益を評価する傾向が表れているという。

ただ、建部氏は円安なしでも日本企業は増益基調を維持できると話す。「消費増税延期に加え、米国を中心としたグローバル需要が利益を押し上げる。コーポレート・ガバナンスなど日本固有のミクロ材料への投資家の注目度も高い」という。GSではTOPIXの今後12カ月の目標水準を1650ポイントから1770ポイントに引き上げたが、円安進行を前提とはしていない。

株主還元に偏る利益配分

一方、足元の日本株高は、円安による業績効果などファンダメンタルズの評価から離れ、過剰な株主還元を背景にした「いびつ」さが目立つという指摘もある。

「企業の利益を株主、従業員、設備投資などにどう配分するべきかという議論がないまま、ムードに乗って株主還元への配分だけがどんどん増えている。賃金を増やそうという動きもあるが、まだ比率としては小さく、経済の好循環はまだ期待薄だ」とりそな銀行アセットマネジメント部チーフ・エコノミストの黒瀬浩一氏は警戒感を示す。配当取りが終われば、日本株をいったん売却する動きが出るおそれもあるとみている。

自社株買いと配当を合わせた株主還元策は急増している。野村証券シニアストラテジストの西山賢吾氏の推計(2月23日付リポート)では、2014年度に配当9.5兆円、自社株買い3.2兆円の計12.7兆円となり、7年ぶりに過去最高額を更新する見通しだ。15年度も計14.2兆円が予想されている。

一方、賃金はここ20年近くほぼ横ばいだ。日本労働組合総連合会のデータでは、所定内賃金は1997年を100として、2013年は92.2。多少の賃金上昇では、労働分配率の改善は期待しにくい。

株主還元が増えることは株価にとってプラス材料ではあるが、利益の適切な配分が行われず、経済の好循環が損なわれるようでは、長期的にはネガティブな影響をもたらしかねない。

(伊賀大記 編集:佐々木美和)

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