リモートワークの高ストレス抑える絶妙な仕掛け 「1日4件」以上の会議がいかに人を疲れさせるか

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実際、上司や人事が体調について直接聴いたとしても、「大丈夫です」と言われてしまったら、その先の打ち手が少ないというのが現状です

ハイパフォーマーほど、ストレスを自覚できない理由

そもそもストレスを人が自覚するのは難しいのです。

ストレスがかかるとアドレナリンやコルチゾールといった「抗ストレスホルモン」が分泌されて、血圧や血糖値を上げ良好な稼働状態を維持しようとします。

その期間は「抵抗期」と呼ばれ、パフォーマンスがホルモンの底上げによって「ドーピング」されているような状態のため、それがストレス状態だと実感することは難しく、むしろ「調子がいい」とすら感じるケースも少なくありません。

しかし、その「抵抗期」が維持されるのはおおむね3カ月程度と言われており、副腎に貯蔵されている抗ストレスホルモンが枯渇すると、一気に出力は低下し、胃潰瘍やうつなど、いわゆる「病名」がつくような状態に陥ってしまい、すぐには回復しません。

ストレス反応の3相期の変化

また、この「隠れテレワ負債者」の実に76%が年収800万円を超える、いわゆるハイパフォーマーであったという結果が出ています。リモートワーク環境は、相手の稼働やメンタル状態を周囲が把握しづらく、かつ、家でも永遠に仕事ができてしまうため、「できる人に無尽蔵に仕事が降ってくる」状況が助長されやすいのですね。実際のところ、エース級の働きをされている社員さんは「1日4件」どころではまったく済んでいないでしょう。

そのため、パフォーマンスが低下に至って長期化してしまう前に、自らのストレスに自覚的になる機会を得ることが重要になります。

鈴木 裕介 内科医・心療内科医

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すずき ゆうすけ / Yusuke Suzuki

2008年高知大学卒。内科医として高知県内の病院に勤務後、一般社団法人高知医療再生機構にて医療広報や若手医療職のメンタルヘルス支援などに従事。2015年よりハイズに参画、コンサルタントとして経営視点から医療現場の環境改善に従事。2018年「セーブポイント(安心の拠点)」をコンセプトとした秋葉原saveクリニックを高知時代の仲間と共に開業、院長に就任。また、研修医時代の近親者の自死をきっかけとし、ライフワークとしてメンタルヘルスに取り組み、産業医活動や講演、SNSでの情報発信を積極的に行っている。

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