「長谷部効果」覚醒の森保ジャパン、見えた可能性 経験生かしてベテランの相談役、若手の模範に

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前向きな材料はそればかりではない。1-0でリードしていた終盤、5バックにして守備を固めたり、セットプレー時に必ず相手GKの前に立って邪魔をするなど、4年前にベルギーに敗れた「ロストフの悲劇」を教訓にした対応も緻密にやっていた。今の日本代表は、監督・スタッフ・選手が意思疎通を密にして、ディテールを積み重ねているのだ。

「4年前のチームはベテランの選手が引っ張って意見を言い合う環境を作ってきた感じだったが、今は建英や守田、律、大地など若い選手もガンガン意見を言ってくる。みんな発言ができるし、自信を持っている」と長友も若手世代の成長を実感。W杯8強に向けた強い覚悟を感じているという。

そんな雰囲気作りに一役買ったのが、冒頭の通り、22~24日の3日間、電撃合流した過去W杯3大会のキャプテン・長谷部誠(フランクフルト)である。

監督、選手、スタッフが長谷部を待望

「前回W杯でキャプテンを務めていた経験値を含めて、チームにプラスになると考えて、ぜひ来て、いろんな経験を伝えてほしいということで3日間参加することになった。これは森保監督を含めて、我々のリクエスト。長谷部は今季欧州CLを戦っていて、世界のサッカーを熟知している。今、彼は指導者の勉強もしているので、指導者目線で我々の戦いぶりにも意見をもらいたい」と日本サッカー協会の反町康治技術委員長もチーム帯同の狙いを説明していた。

フランクフルトのオフを活用しての参加ということで、さすがに一緒に練習することはなかったが、スタンドやベンチで後輩たちの一挙手一投足を見つめる目は厳しく、妥協を許さない意思の強さが感じられた。

「長谷部さんも『本当に自分が来ていいのか』という話をしていましたけど、僕も個別に話して『ぜひ来てほしい』と言った」と吉田が言うように、本人の中ではいったん区切りをつけた代表に戻るに当たって逡巡する部分も少なからずあったという。それでも、思い切って帰ってきたチームは前向きな化学変化を起こした。

「いるだけで緊張感だったり、心身ともに整う感じがある。長谷部さんしか出せないオーラがある」と長友もしみじみとコメント。やはり存在感の大きさは絶大だった。実際、彼がいれば、ベテラン選手の相談役になれるし、同僚・鎌田の援護射撃もできるし、若手の模範にもなれる。異例中の異例ではあったが、このタイミングでレジェンドを加えたインパクトは大きかった。

長友佑都
長友も”長谷部効果”を実感(筆者撮影)
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