ウクライナ戦巡るプーチン「意味深発言」の意図 中露首脳会談後の記者会見から読み解く

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「1つの中国」というのは、ウクライナの領土一体性という理念とも通じるものであって、外国勢力の介入による住民投票によって帰属を決定するというのは受け入れられないのである。ここに隙間風が吹いている。

「作戦」の目標がドンバスに変わった?

ところで、プーチン大統領は会合後の記者会見においてハルキウ州の支配地域から撤退したことを含め、最近のウクライナ情勢について、次のような発言をしている。

1. 停戦交渉はウクライナ側が拒否し、戦場で決着をつけようとしたのである。
 2.「作戦」の主たる目標はドンバスの全領域の解放である。ドンバスにおける攻撃作戦は進行中であり、進行のテンポは速くはないが段階的に新たな領土を押さえている。
 3. ロシアは全軍で戦闘しているのではなく、戦闘に従事しているのはその一部であるところの契約軍人のみである。
 4. ウクライナ政府は積極的な反転攻勢作戦を開始したとしているが、どのようにそれが実現され、どのように終わるのか、見てみよう。

余裕に満ちた発言にも聞こえるが、問題は「作戦」の目標をドンバスの解放に絞っている点である。そして、ドンバスの解放もそれほど速やかには進行していないことを認めていることになる。このことは、プーチン大統領が幻想を抱いているのではなく、現実の戦闘状況を正確に把握したうえで、発言していることを示している。

ただし、7月にはセルゲイ・ラヴロフ外相が、「作戦」の目標はドンバスのみならず、ヘルソンやサポリージャも含まれると発言している。ロシアは、このウクライナ南東部の地域を併合することを目標と定め、着実に歩を進めていくだろう。

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