中から「政府のコロナ対応」見た経済学者の課題感 科学的知見を活用して将来の危機に備えるために

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仲田:しかし、藤井さんが言われるような分析を行っていくには、政府の中にフルタイムで1~2年間継続して雇用されている専門家がたくさんいるような状況にならないと、分析しながらそれを意思決定に活用していく体制をつくるのは難しいと思います。

私たちも今回、片手間では全然間に合わなくて、自分たちは毎日フルタイムでコロナ分析に取り組み、リサーチアシスタントも大勢雇って大きなチームをつくりました 。そこまでやってようやく政策現場に多少お役に立てるような分析を発信することができたのだと考えています。

政府の中で、より包括的にそれを実行していくためには、たとえばコロナ危機が始まったときに20~30人くらいの若手研究者を集めて、適切なポジションをつくり、お金も出して、大学等に任期付きのポジションで雇われている人はその期限を止めて、フルタイムで安心してコミットしてもらえるような環境をつくらなければ、大きなインパクトは残せないのではないかと思います。

藤井:なるほど。そうかもしれないですね。

政策現場と研究者のつながりの弱さ

仲田:また、政府の中にこういう体制がつくられていない原因の一つとして、行政や政治家の方々に「世の中にどんな研究者がいて、誰が何をできるのか」といった情報が届いておらず、政策現場と研究者がつながるネットワークも乏しい、という問題もあるのではないかと思っています。

政府の会議等にたびたび参加している方々だけでなく、実際に手を動かして分析をこなせる若手の研究者たちと政府関係者との間にネットワークが築かれていれば、そういう研究者たちの協力も得やすくなります。そのためにも、私たち研究者が日頃からいろいろな発信をして広く社会で認知されるようになることも重要だと思います。 

ともあれ、今回の経験を通じて、日本の行政・政府には、きちんとした科学的な分析を求めていて、それを参考に意思決定したいと考えている人々もたくさんいるのだ、ということを実感しました。

――科学的知見の供給サイドである研究者側にもっと改善すべき余地があるというお考えですね。研究者が現場の求める政策分析を発信していけば、受け入れられる素地はすでに十分にあるし、むしろ現場もそれが求められているという手応えを感じられたということでしょうか。

仲田:私たちがコロナ分析を通して関わった方々の中には、科学的な知見を求めている人が多い印象を持った、というのが正確なところです。それが他の分野でも同じかどうかまでは、正直わかりません。ただしコロナ政策に関して言えば、供給サイドに改善すべき点が多々あったのではないかと考えています。もちろん、需要サイドにも改善点はあったとは思いますが。

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