アストンマーティン、日本法人設立のワケ 元日産副社長から転身のCEOが明かす

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さらに、中期的にはすべてのラインナップを刷新し、長期的には、ラインナップを広げて、さらに魅力的にしたいと宣言。それにともなって、3機種のエンジン開発を考えている。最上級の12気筒ユニットはアストンマーティンが独自に開発したものであり、V8エンジンに関しては、メルセデス・ベンツのスポーツカー部門であるAMGと共同で開発を進める。さらに、環境問題への対応というニーズに対しては、新しいパワートレインを開発する。ただし、環境対応の次世代エンジンでもスポーティネスは譲れないとし、ディーゼルの選択肢はないという。

綱渡りのビジネスから脱却へ

また、就任にともなって行われた約5億ポンドの投資については、すべてのスポーツカーラインナップの刷新のために投資するとした。従来の100年はブランド・ヘリテージを重視してきた一方で、ビジネスとしては綱渡りのような状況だった。それに対して、これからの100年を見据えた戦略を打ち出し、ビジネスを広げたいと考えている。

事実として、アストンマーティンは103年間の歴史の中で、わずか7万台しか自動車を生産しておらず、しかも、そのうち半分はイギリス国内向けだ。新興国の開拓はまだ未知数で、これまでわずか2000台を販売したのみ。今後は、アジアや中東といった地域の市場開拓に加えて、まだ数の少ない女性オーナーを開拓するなど、新しい顧客層にアピールする方針だ。

英国を除くと、世界第2の市場である日本に関しては、あらたに福岡にショールームをオープンさせるなど意欲を見せる。あわせて、カーナビやETCなど、日本向けの装備を充実させていく。従来から定評のあったアスターセールスのサービス体制もさらに充実させる。

その一環として、ニューポート・パグネルの元本社工場を、アストンマーティンで生産されたすべてのモデルの修理やレストレーションに対応するワークサービスとして維持し続ける。一方で、「パワー、ビューティ、ソウル」というブランド理念は決して変えずに、SUVは作らずに、美しいスポーツカーだけを作るという。新CEOとして新しい顧客や市場の開拓に照準をあてつつも、長年の歴史を支えてきたファンの期待にも応える心づもりのようだ。

川端 由美 モータージャーナリスト
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