83歳創業者が語る「パタゴニアを売却する」理由 約4300億円相当の資産を2団体に譲渡

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現在も彼は擦り切れた古着を身にまとい、ガタついたスバルを運転し、ベンチュラとジャクソンの質素な家を行き来している。シュイナードはコンピューターも携帯電話も持っていない。

1973年に設立されたパタゴニアは、彼自身と彼の妻の理想主義的な優先順位を反映した会社となった。同社はオーガニックコットンから職場でのチャイルドケアまで、あらゆるものをいち早く取り入れた。ブラックフライデーにはニューヨーク・タイムズ紙に「このジャケットを買うな」という広告を掲載して、消費者の購買を阻止しようとしたことでも有名だ。

自分の資産が増え続けるという「難題」

同社は数十年にわたり売り上げの1%を寄付してきたが、そのほとんどは草の根の環境保護活動家への寄付であった。そして近年では、ベアーズイヤーズ国定記念物を守るためにトランプ政権を提訴するまでになり、より政治的な活動を活発化させている。

しかし、パタゴニアの売り上げが急増する一方で、シュイナード自身の純資産は増え続け、過剰な富を嫌うアウトサイダーにとっては居心地の悪い難問を生み出していた。

シェナード
(写真:Natalie Behring/The New York Times)

「『フォーブス』誌に億万長者として掲載されたときは、本当に、本当に腹が立ったよ」と彼は語った。「銀行に10億ドルの資産なんてない。私はレクサスにも乗っていない」。

『フォーブス』誌のランキング、そして新型コロナウイルスによるパンデミックは、過去2年間に展開されたプロセスを突き動かし、最終的にシュイナード夫妻が会社を手放すことにつながった。

2020年半ば、シュイナードは、同社のCEOであるライアン・ゲラートを含む親しいアドバイザーたちに、もし彼らが良い代替案を見つけられないならば、会社を売却する用意があると言い始めたのである。

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