西九州新幹線「現地の盛り上がり」は本当なのか? 部分開業は「終わりの見えない戦い」の始まり

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長崎県は、南北に長い。離島も多くある。西九州新幹線の沿線から離れた長崎県民がその開業で盛り上がっているかについては、「やはり難しいものがある」と西九州新幹線開業準備実行委員会の日高雅之会長は話す。「西九州新幹線が通る長崎市、諫早市、大村市とそれ以外の地域では、同じ県内でも『うちは通らないから関係ない』という温度差が、確かにある」。日高会長が暮らしている長崎県北部の松浦市では、そもそも長崎市より福岡市のほうが行きやすいという。

西九州新幹線(長崎ー武雄温泉)開業準備実行委員会の日高雅之会長(写真:恵 知仁)

そうした状況を踏まえ、西九州新幹線の開業に向け長崎県内での機運を高めるため、県内の青年経済6団体などによって設立された組織が、同委員会だ。長崎県内の小学生や中学生、高校生、大学生などを対象に、「西九州新幹線 夢の駅弁絵画コンクール」「西九州新幹線ワンハンドフードコンテスト」を開催するなどの取り組みを行ってきた。

「県民に、新幹線について知ってもらい、具体的に考えてもらいたい」と日高会長は意気込む。たとえば「ワンハンドフード」のコンテストには、「今回の西九州新幹線は所要約30分程度の部分開業である(短い時間なので、ワンハンドで手軽に食べられるものを考えよう)」という情報が込められている。これらのコンテストには、西九州新幹線が通らない松浦市や平戸市、離島の壱岐や五島などからの応募もあったそうだ。

開業近づき、認知度は高まったが…

長崎県の新幹線対策課も小学生向けにパンフレットを配布し、出張講座をするといった取り組みをしてきたという。パンフレットには「新幹線開業で自分に何ができるか、考えてみよう」という欄を設けた。「自分で考えて、自分ができるところからやってみよう」というところから機運が高まれば、という思いだ。

そうした同委員会や県の活動を振り返り、日高会長は「これまで長崎県内で『新幹線はいつ来るの?』という反応が少なくなかったが、開業が近づくにつれ報道も多くなり、そうした反応が減っている印象はある」と話す。ただ、コロナ禍の影響で開業半年前に行う予定だったイベントが中止になるなどし、機運の醸成がどこまで進んだか、正直、測りかねる部分もあるという。

西九州新幹線の新大村駅が誕生する長崎県大村市。今回の部分開業で長崎駅とはわずか15分程度、博多駅とも1時間15分程度で結ばれる。長崎市内はもちろん、福岡市内への通勤通学も現実的なものとなる。新幹線の恩恵が大きい地域だ。

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