バーバリーは三陽商会から離れて勝てるのか 蜜月関係を終えたあとに待ち受ける試練

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  代表取締役社長、杉浦昌彦氏(撮影:今井康一)

当初は約350のバーバリー売り場を200カ所ぐらい引き継げば御の字としていたようですが、現在の見通しでは「240~260カ所が後継ブランドのマッキントッシュ・ロンドンに移行できそう」(杉浦昌彦社長)という見通しになりました。

現在150店で売られているバーバリー・ブルーレーベルとバーバリー・ブラックレーベルはライセンス契約の内容が変更され、それぞれ新ブランド名が「ブルーレーベル・クレストブリッジ」「ブラックレーベル・クレストブリッジ」に変更されます。つまり、「バーバリー」ネームが外され、象徴である「ホースマーク」やいわゆる「バーバリーチェック」柄も使用できなくなり、今後は裏地などで多用されているマイクロチェックのみになるということです。

このクレストブリッジは、パリコレクションなどで活躍するデザイナーの三原康裕氏をクリエイティブディレクターとして起用し、デザイン面などに革新性をもたらす狙いがあるそうですが、いったんは3年という短い期間のライセンス契約であり、それ以降は売り上げ状況次第という危うい契約です。

皮肉なことに三陽商会の前年度(2014年12月期)決算は、売上高1109億円(前期比4%増)、営業利益102億円(同44%増)と従来計画を上回る増収増益でした。基幹ブランドのバーバリーが終焉を迎えることが明らかとなったことで、それを惜しむかのように想定を超えた駆け込み需要が沸き起ったのです。これまで売上高の半分近くがバーバリーブランドだといわれてきた三陽商会にとって、バーバリーとの契約終了による収益への悪影響は計り知れません。

過去にも数多い契約解消の事例

バーバリーの後継として8月から展開される「マッキントッシュロンドン」

しかし、売れているのに、なぜこのようなことが起きたのでしょうか。実は、過去においても同様な話が数多くありました。

代表例として、1997年に解消されたカネボウとクリスチャン・ディオールのライセンス契約です。1964年から33年続いた関係が猶予期間もないまま、クリスチャン・ディオールからほぼ一方的に解消されます。ご存知のようにクリスチャン・ディオールはラグジュアリーブランドとして日本で君臨しています。

1998年に契約が解消されたデサントとアディダスの例も象徴的です。この時も、28年間という蜜月関係があったにもかかわらず、アディダスからデサントにほぼ一方的な契約解消話が進められました。当時、デサントの売上高の約4割がアディダス事業とされており、その後デサントがアディダスとの提携解消前の収益水準を回復できたのは、つい最近。15年近い歳月を要しました。

日本企業の努力により育てられた外資系ブランドは、その力が大きくなるといきなり独り立ちを宣言します。それゆえに、外資系ブランドとのライセンス契約を結んでいる日本企業は、常に契約解消の危険をはらんでいることを感じながら、その契約を継続していくことが求められているのです。

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