「角乗」東京・木場で受け継がれる伝統ワザの極意 保存会メンバーの林野庁幹部が20年続ける理由

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角乗は、約30㎝四方、長さ約5mの角材の上に乗り、竹竿でバランスを取りながらさまざまな技を披露する。角材は、「角」、竹竿は「タメ竿」と呼ばれる。「角」は水に浮かんだ時にとがった角が真上になり、平面部分を水平にして人が立つと回転しようとする力が働く。この回転力を「ためる(とどめる)」ので、タメ竿という呼び名がついた。

技には、基本的な技の「地乗り」のほか、男性用の高下駄をはく「足駄乗り」、1本の角に2人が乗る「相乗り」、角の上にたてた梯子に乗る「梯子乗り」、お供えを置く「三宝」を3つ重ねたうえで演技する「三宝乗り」などがある。ここ数年は、毎年10月の第3日曜に行われる江東区民祭りで披露してきた。

「いまできることをやっていくしかない」

昨年、一昨年とコロナ禍で中止されたため、来月16日の午前11時からのお披露目は3年ぶりだ。保存会の加藤会長は「みなコロナにかからず、元気でやってもらいたいとただただ願うばかり。こういうものは、この先残していくのがどんどん難しくなる。でもわれわれはいまできることをやっていくしかない」と表情を引き締めた。

「東京都指定無形文化財 木場角乗保存会」の加藤元一会長
保存会の加藤元一会長(撮影:河野博子)
歌川広重が描いた深川木場の雪景色 (出典:国立国会図書館「錦絵でたのしむ江戸の名所」)

林野庁の福田さんが角乗に取り組み始めたのは、2001年に江東区にある東京辰巳国際水泳場で保存会が行った一般向け講習会(体験教室)に参加したのがきっかけ。当時、木場公園から歩いてすぐの林野庁官舎に住んでいた。「体験教室に通い出してすぐ、イベント池でのお披露目を見に行った。これやりたいな、こんなふうにできればいいなあ、とあこがれたんですよね」。

体験教室最後の日、「もうちょっとやってみたいんですけど」と保存会の人たちに直訴したら、「じゃあ、練習に来てもいいよ」と言われた。4年目には、高下駄をはいて練習中、角材の真上に落ちて肋骨を折った。その時はさほど痛みを感じなかったのに夜になって苦しくなった。病院に行くと、外科医が「ああ、折れてますね。肋骨というのは折れるものですから、我慢してください」。その数年後、また肋骨を折ったが、怖いとか、やめようとは思わなかったという。

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