壮大な「単なる買い戻し相場」が来るかもしれない 「経済は不振=株価は上昇しない」とは限らない

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しかし、来年については、遅効性のある物価指数をにらみ、アメリカの連銀が金融引き締めを持続することが予想される。そのため、その累積的な効果から、本格的に同国の景気や企業収益が悪化しそうだ。

今年中の景気後退や減益は時期尚早だと考えるが、来年は正念場だ。すると、今年末の株価の高値を受けて過度の楽観論が市場にあふれたところが株価のピークで、そこからいったん主要国の株価は大きく反落すると懸念する。

とはいっても、来年の日米などの株価指数の最安値は今年の最安値を下回らないと見込んでいるのだが、そうした来年の展望についてはこれまでも当コラムで極めて簡単には触れたし、まだ先の話であるので、いずれ詳しく解説することにしよう。

投資環境や市場動向で改善のサインはある

こうした「実態面にさしたる悪化はないがさしたる改善もない中、売られすぎた株価が今年内に正常化し、場合によっては買われすぎになる」という考えが当方の展望の背骨だが、さすがに何の改善もなく株価が上がるということでもない。

実態面の変化としては、やはり原油価格の軟化が目につく。世界的な指標であるWTI原油先物価格は8月末にまた1バレル=90ドルを割れるなど、今年1月以来の安値圏で推移している。

OPEC(石油輸出国機構)とOPEC加盟国以外の産油国の協議体である「OPECプラス」は、9月まで増産幅を絞り込みながらも増産自体は続けてきた。ところが9月5日には、10月から「日量10万バレルの減産に転じる」と公表した。そうした決定にもかかわらず、原油価格の下落傾向は続いている。

株式市場も、以前であれば何でも悪く解釈する心理状態であったため、原油価格が下がれば「それは世界経済が悪化して原油の需要が縮小しているからだ、株は売りだ」といった解釈が横行していた。

足元では、逆に「原油価格下落=インフレ懸念の後退」と好感しているようだ。インフレ懸念による主要国での利上げも、株価の懸念要因だった。実際に、まだインフレ退治が終わったとはとても思えず、世界的な利上げはまだ続きそうだ。

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