松下幸之助を叱った職人たちの心意気

散髪屋とメガネ屋は、なぜ叱ったのか

昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部) 

 

松下幸之助は、散髪屋さんは、「米倉」と決めていた。東京では銀座本店、京都では、ホテルフジタ、京都グランドホテル、リーガロイヤル大阪に行っていた。これらの米倉さんのお店では、随分と迷惑をかけたのではないかと思う。

顔を粗末にすることは、商品を粗末にしているのと同じ

松下幸之助は、自著のすべてを口述で話し、それをPHP総合研究所の研究員が録音、速記して、最初の素稿をつくる。その素稿のコピーを研究員が読み上げ、松下は素稿を目で追いながら、「ちょっと待ってくれ。ここはこういう言葉に代えてくれ」「ここは削ってくれ」「ここにこういう考えを入れよう」「なんか事例を考えてくれ」というように、修正していく。少なくとも4~5回はその作業をする。最大で60回の検討をしたこともあった。

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そういう過程であったから、時間があれば、私も原稿を読まされた。松下の部屋で、あるいは応接室で、ところ構わずであった。そういうところはいいが、強く記憶に残っているのは、バンク・オブ・アメリカの元会長、ルイス・ランドボルグ氏と対談するために、ハワイに行く飛行機の中で、原稿を読まされたこと。いくら隣の席とはいえ、私の声が周囲のお客さんに届かないように、しかし、松下には聞こえるように、飛行機の騒音をぬって、3時間、4時間、読み続けるのは、今にして思えば、我ながらどうして読めたのか、不思議に思う。

米倉さんの時も、同じで、松下が散髪をしてもらっている間、理髪師さんとは反対側に、常に位置を移動させながら、原稿を読まなければならなかった。隣にお客さんのいないときにはいいが、いるときは、相当神経を使って読んだ。

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