日本でも「女性の戦闘機乗り」は生まれるのか 安倍政権下で自衛隊も「働き方改革」

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いずれも理由は、「母性の保護」、「男女間のプライバシー確保」、「近接戦闘の可能性」や「経済的効率」などだ。たとえば狭い潜水艦の中で勤務する場合、空間に男女の区別を付けるのは難しい。また大きな重力がかかる戦闘機に女性自衛官が妊娠初期で自覚がない間に搭乗してしまえば、胎児に過度な負担を与えてしまう危険もある。

ところがこのたびの取り組みで、女性自衛官について「母性の保護等女性を配置する際の制限すべき理由について適宜精査し、配置制限の見直しを実施する」と規定している。これを根拠に、女性の配置制限は大きく撤廃されるのだろうか。

世界を見渡すと、かつて男性が主流だった軍事防衛分野における女性の登用拡大は、世界の趨勢になっている。

その背景のひとつは、第二次世界大戦後にジェンダー統合が進んだことだ。2000年に採択された国連安保理決議1325号も、和平協定、紛争予防、平和構築支援などの全プロセスに女性が参加することを求めている。

またサイバー戦など戦争のあり方自体が変化しており、体力的にハンディを負う女性でも戦闘行為に参加できるようになったことも一因となっている。湾岸戦争以降、前線と後方地域の線引きが不明確になったことも、女性の前線配置開放に寄与している。徴兵制から募兵制に移行して男性兵士の確保が困難になっていることも、女性の軍事分野での参加を促している。

各国の対応方法はどうなっているのか

こうした傾向に各国はどのように対応しているのだろうか。

たとえばアメリカでは2013年1月、レオン・パネッタ国防長官(当時)が女性兵士の前線での戦闘行為禁止の解禁を宣言した。きっかけは80%の将官が前線勤務を経て昇進している陸軍で、同じ待遇を求める女性兵士から要望が出たためだ。

もちろんすぐさま全面的な解禁というわけではなく、現状評価や基準作成などを行った上で判断されることになる。予定では2016年1月には調査を完了することになっているが、それでももし女性の配置が好ましくないという結果が出た任務や部隊があるのなら、例外を認める余地も残している。

また社会のジェンダー統合が世界で最も進んだスウェーデンでは、1989年に国防軍における全ての職種で男女平等が実現されている。だが1994年に部隊長クラスの男性将校により、女性の潜水艦勤務や戦闘機搭乗がいったん禁止されたことがあった。「母性を保護しなければならない」と主張されたためだ。

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