上陸!「ネットフリックス」は何がすごいのか
強みは「コンテンツそのもの」に移行

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テレビで話題のコンテンツをネットやモバイルで自由に楽しめて、ケーブルテレビの1/10以下の料金で済む。ネット映像配信サービスの魅力はこうした「自由で安いテレビ視聴」だった。そこから、だんだん独自のコンテンツの面白さの勝負へと変化している。

ハリウッドスタイルで1話数億円から10億円をかけて製作される番組も魅力的だ。一方、ネット配信向けに第1シーズンが製作された作品を青田買い的に楽しむのも面白い。その後、テレビチャンネルなどのネットワークやスタジオなどの買い手が付いてシリーズが継続していくという、「出世作品」になることもある。話題になる作品をより早く楽しむ、という新しい価値が生まれている。

コンテンツが人々の支持を得て、継続・発展していく。Netflixがきっかけとなったネット映像配信は、コンテンツの新しいエコシステムを作り出している。

しかし筆者は、まだケーブルテレビの解約ができていないと書いた。オリンピックやワールドカップサッカー、テニスなどの試合中継を見ようとする際、ケーブルテレビの契約が必要だからだ。

米国に存在する「テレビの壁」

せっかくApple TVやiPadにスポーツチャンネルのアプリがあるにも関わらず、これらを有効化するにはケーブルテレビの契約のログインとパスワードが必要となる。有料でも良いから、アプリ内でイベント期間中だけ見たいと思っても、その方法がないのだ。

ここに、視聴体験のネット化が進む中で米国存在する、テレビの壁が存在する。もちろんこの要望は、Netflixのように自由で安い視聴を体験してしまったネット側のユーザーの意見だ。放送権の取得など「なぜその中継がテレビで流れるか」というビジネスへの理解も必要となる。しかし何らかの方法を用意しても良いのではないだろうか。

もしもAppleがテレビに取り組むとしたら、iTunes Radioのように、iTunes上のドラマや映画のカタログを背景としたNetflixに対抗するサービスも視野に入るだろう。しかしそれ以上に、既存のテレビ、あるいはケーブルテレビでの視聴体験にメスを入れることにも期待している。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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