激増!学生インターンシップ戦線に異変アリ 就活後ろ倒しの余波はここにも!

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実は、およそ5社以上のインターンシップに参加した学生の中には、社名を憶えていない、全部は思い出せないというケースも結構あり、筆者は大いに驚いた。学生の期待とずれると印象にも残らないということだ。とりわけ事業紹介など自社のPRの域を出ないケースがこれにあてはまる。また、「行ってみたら思っていたものと違う内容だった」という声もよく聞かれ、中には「時間の無駄だと思い途中で帰らせてもらった」という学生もいた。

一口に「インターンシップ」と言っても、企業には各社各様の実施目的があり、学生にもそれぞれ参加する目的、期待することが異なる。日本の場合、1day、本格的な研修・実習、職場見学、グループワークなどと様々なタイプが混在するのに、「インターンシップ」の名のもとに一緒くたにされていることが、こうしたミスマッチの原因であろう。これではお互いのためにならない。

「インターンシップ」という大括りでの場の提供ではなく、「どんな内容のプログラムで、どんな人に参加してほしくて、このプログラムのゴールはなんであるか」を明確にし、しかもそれを学生側に分かりやすく伝えることが必要だ。

アメリカなど欧米の大学に比べて日本の大学は長期休暇が短いなど条件が異なるので、数カ月にわたる職業訓練としての実施はそう簡単ではない。しかし、若者がキャリアを考えるうえでインターンシップが今後ますます重要な位置を占めるのは間違いない。

「インターンシップ元年」と呼ばれるほど実施企業が増えた今だからこそ、目的に応じた使い分け、細分化が求められる。職場見学でも仕事体験でも、それを求める学生にはそれを提供できるようにすることで、より有意義な場として機能していくはずだ。

学生側も大学3年生になってから初めてインターン先を探すのではなく、ぜひ低学年から多くの「リトマス試験紙」でさまざまな仕事を測って自分の適職、適社を探ってもらいたい。(そのためにはまず企業側が低学年向けプログラムをもっと充実する必要があるが)

繰り返しになるが、インターンシップのゴールはプログラムを通して企業学生双方がお互いのフィット感を確かめることにある。企業は仕事の「魅力」と、敢えて「大変さ」の両方をしっかり見せ、学生は目的意識(=自分はその仕事をやれそうか判断する心づもり)を持って参加することで、いい出会いのきっかけになるだろう。
 

武井 房子 株式会社ディスコ キャリアリサーチ 上席研究員

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たけい ふさこ / Takei Fusako

1970年生まれ。1993年 株式会社ディスコ入社。採用広報営業部にて、主に化学、機械、エネルギー業界等を担当。1997年 調査部門に異動し、企業調査ならびに学生モニター調査の設計、実施、分析等を手掛ける。1999年~2007年には、顧客向け情報誌『人と採用』編集長を兼務。1年間の育児休暇取得後、2009年に復職。
現在、大学生や企業の採用担当者、留学生などを対象とした調査を年間約20本実施。年々広がる就活生とのジェネレーションギャップをものともせず、数多くのインタビュー調査を自ら企画・敢行し、就活生の本音をウオッチし続けている。

CDA(厚生労働省指定キャリア・コンサルタント能力評価試験合格)
社団法人総合経営管理協会認定 採用コンサルタント資格 認定者
公益社団法人全国求人情報協会 新卒等若年雇用部会「就職活動の在り方に関する検討会」専門研究員
 

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