津軽線、被災して見えた「もし鉄道がなかったら」 8月の豪雨で部分運休、乗合タクシーが振替輸送

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国土交通省の有識者会議は7月25日、輸送密度が1000人未満の地方鉄道について、JRか自治体の要請に基づき国主導の協議会を設置し、3年以内をメドに存廃を判断する仕組みを導入すべきだ、と提言した。

その直後の7月28日、JR東日本は2019年度現在の「利用2000人未満の路線」の収支を公表した。津軽線は青森―中小国間が21億6400万円、中小国―三厩間が7億1100万円、計28億7500万円弱の赤字だった。2019年度の利用者は、JR東日本が発足した1987年度に比べると、青森―中小国間が93%減、中小国―三厩間が74%減だった。

さらに8月1日、JR東日本は直近の各路線の利用状況を公表した。コロナ禍の影響もあり、2021年度の津軽線は全線の利用が1日当たり356人、青森―中小国間が556人、中小国―三厩間が98人で、コロナ禍前の2019年度に比べてそれぞれ21%、23%、8%減少していた。

記録的豪雨で大ダメージ

祭りシーズンと夏休み本番を迎えた2022年8月、青森県一帯を記録的な豪雨が襲った。各地の降水量は軒並み、平年の4~5倍に達して、観測史上の最多記録を更新した。

8月3日に最初の豪雨が襲い、津軽線は蟹田―三厩間が復旧に10日前後を要する被害を受けた。追い打ちを掛ける形で、8月9~10日にはそれを上回る豪雨が続き、さらなるダメージが加わった。JR東日本は8月10日、「蟹田―三厩間の復旧のメドが立たない」と公表。8月19日には、盛り土・表土の流出9カ所、土砂流入4カ所、計13カ所で大きな被害が確認されたことを明らかにした。これらの被害は、小国峠を越える大平―津軽二股間に集中し、盛り土がなくなって線路が宙に浮いている個所も見つかった。

奥津軽いまべつ駅付近では8月3日の豪雨で今別川が氾濫、駅の1階が浸水し、通常通り運行していた北海道新幹線から下車した利用者が一時、駅から出られなくなった。駅前の道路の路肩がえぐられ、近くの県道沿いでは今別川に架かった水道設備が破壊された。河原には大きな流木が転がり、水流の激しさを想像させた。駅の北方に位置する大川平地区では、ブドウ畑が水と泥に浸かった。

奥津軽いまべつ駅付近の今別川
奥津軽いまべつ駅付近の今別川。流木と破壊された水道施設=2022年8月(筆者撮影)
今別町・大川平地区の様子
今別町・大川平地区のブドウ畑にたまり、集められた泥=2022年8月(筆者撮影)
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