サラリーマン長者がESG投資に見向きもしない訳 流行に惑わされず、ESG投資の実態を見抜く

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③ 勝つことよりも負けを小さくすることを考える

上がる銘柄、上がるタイミングを当てるのは、プロでも難しいこと。勝ち組のサラリーマン長者でも、勝ったり負けたりというのが実態です。問題は、いかに勝ちを大きく、負けを小さくするかです。

「9勝1敗でも1敗が大きければ資産は減ります。1勝9敗でも1勝が大きければ資産は増えます。勝つぞ!と意気込んでいた若いときよりも、負けないことを意識するようになって、パフォーマンスがぐんと上がりました」(川俣裕さん)

「事業内容が良く、長期の移動平均線が上向きの銘柄をリストアップし、24カ月移動平均線まで下がるのを待って買います。この買い方なら、そこから先、大きく下がることはまずありません。売るときは、逆指値を使って、損失を小さく、利益を大きくするようにしています」(新田良平さん)

④ より良い投資スタイルを探求し続ける

株に限らず勝負事は、勝ちパターンがあると断然有利です。サラリーマン長者は、試行錯誤によって優れた投資スタイルを見つけ出し、さらに、それを改善し続けています。

「ここ10年くらいは陸運・海運株のスイングトレードを中心にしていますが、それまで色んな投資方法を試し、失敗を積み重ねました。今でも、気になる投資法があったら、試すようにしています」(加藤匡さん)

「ブログや著書で『必勝法を見つけた!』と喧伝する投資家がいますが、数年間勝ったくらいで調子に乗るのはどうでしょうね。ウォーレン・バフェットでも、投資方法をどんどん変えているんですよ。マーケットも自分の資産状態も変わるので、投資をしている限り、より良い投資スタイルを探求し続ける必要があります」(松本早苗さん)

サラリーマン長者はESG投資が嫌い

ところで、個人的な興味から、近年流行のESG投資についても尋ねてみました。5人ともESGファンドを保有しておらず、個別銘柄の選択でもESGを考慮しない、ということでした。

「ESGファンドに限らずテーマ型投資信託は手数料が高く、証券会社を儲けさせるだけです。個別株でも、ESGに積極的な会社と投資収益の良い会社は別で、ESGを投資基準として考慮していません。ESGがひどい会社を投資対象から外すことはありますけどね」(新田良平さん)

「投資で世の中を良くするってどうでしょうね。私は、投資をあくまで金儲けの手段と割り切っています。そして、投資で得た利益の5%を赤十字などに寄付しています。うさんくさいESGファンドを買うより、よっぽど世の中の役に立つのではと自負しています」(小松芳朗さん)

また、5人全員が、自分の投資方法や運用成績をブログなどに公開しておらず、個人投資家同士で情報交換をすることもほとんどありません。自分で得た情報に基づき、自分なりに考えて投資しています。

前回紹介した倹約生活とあわせた結論としては、「世間の目を気にせず、流行に惑わされず、自分の頭で考えて生活し、投資する」ことが、サラリーマン長者になるための秘訣と言えそうです。

最終回の次回は、サラリーマン長者の投資以外の生活について紹介します。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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