ガンダムは、なぜ今でも人々を魅了するのか 映画で描かれたガンダムの新しい基準

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最新技術を駆使したモビルスーツのアクションシーンは大迫力だ

一方で、アクションシーンは、CGをふんだんに活用した。CGをセル画風にすることで、手書きとの違和感もない。監督を務める今西隆志氏は、フルCGによるガンダムシリーズ「MS IGLOO」でも監督を務めたほか、「宇宙戦艦ヤマト2199」など他作品でもCGディレクターを務め、CGを知り尽くしている。さらに、「超時空要塞マクロス」などのアクションで名高い板野一郎氏が演出をすることで、実写を凌駕する映像美を生み出した。

安彦氏がアニメーターとして活躍していた二十数年前は、今日のようなCG技術は存在しなかった。それだけに「安彦さんもびっくりしていましたね」(谷口氏)。

ガンダムの新たなスタンダード

本作は、劇場公開ではなく「イベント上映」と銘打っている。上映期間やスクリーン数を限定していること、そして、劇場でブルーレイやDVDなどの映像パッケージを販売するためだ。通常の劇場公開映画は、公開後4〜6カ月経過しないとパッケージは発売されないが、イベント上映なら、映画の興奮が冷めないうちに、その場でパッケージを購入できる。同様の上映スタイルで成功した「機動戦士ガンダムUC」の手法を本作でも踏襲している。

子供時代のシャアとセイラ。本作の主人公はこの2人だ

同じイベント上映という手法をとった「宇宙戦艦ヤマト2199」の最新作「星巡る方舟」が劇場用作品としてロードショー公開された。今回、4部作で予定されている「シャア・セイラ編」以外にも、原作にはファーストガンダムでは描かれない「前史」が残っている。これを題材に、劇場用作品としてより多くのファンに見てもらえる作品を作ってもらえないか。こんな質問に対して、谷口氏からは「そうなってほしいという気持ちはもちろんある。そのためにも、まず今回の作品をたくさんの人に見てもらいたい」という答えが返ってきた。

2月15日に開催されたファン向け上映会の壇上で、安彦氏は「この作品がガンダムの新たなスタンダードになってほしい」と期待を述べた。4部作を含めた前史がすべて描かれるとファーストガンダムの第1話につながるわけだが、安彦氏が“新たなスタンダード”呼ぶ圧倒的なクオリティでファーストガンダムのリメークも見てみたい。その鍵を握るのが、「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル」の観客動員やパッケージ売り上げなのである。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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