開発進むも郷愁漂う「岐阜」タクシーから見た実態 新旧が混じり合ったような独特な心地よさ

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夜もふけ、北口からほど近い吉野町の飲食店に入ると、平日にもかかわらず20~30代と思われる1人客たちが席を埋めていた。話を聞くと名古屋で働くサラリーマンが多く、ここ数年はこのあたりで飲む機会が増えたという。店員と話すと、食での町おこしも図っていると胸を張る。

「このあたりに若い人が集まるのは、行政主導ではなく、地場の若い人たちが自分たちで考えて情報を発信していったからです。

その1つが『食』でした。10年くらい前からかな、賛同する若い人たちがどんどん出てきて“面”で広がった。繊維の町が廃れていき、このままじゃダメだと街の人たちが頑張って変えようと動いてきた。だから、自然と人が集まってくる場所になっているんです」

地元に貢献したい若いドライバーもいる

日付が変わるころには多くの店が閉まっていく。頬を赤らめ、タクシーに乗り込む者も散見される。駅方面からの迎車が来るも、なかなかタクシーはつかまらない。やっと拾えたドライバーは、20代の若者だった。まだ歴3年にも満たないという中田さん(仮名)は、目的地のホテルへ向かう道中で、こんな話をしてくれた。

「お客さんには『若いね』って、驚かれますが、岐阜が好きだから地元に貢献できる仕事がしたくてドライバーになりました。このあたりの飲食店もそうですが、地元を盛り上げていこう、という同世代も多い。エラそうだけど、僕たちの世代から街を変えていけたらいいな、とも思ってます。実はウチの会社には10人近い20代のドライバーがいますよ」

大規模開発、利用者増に加え、若者たちが関わった岐阜駅周辺の町おこし。時代と共に訪れた大きな変化の波は、タクシー業界にも確かな影響を与えているように映った。

栗田 シメイ ノンフィクションライター

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くりた しめい / Shimei Kurita

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。連絡はkurioka0829@gmail.comまで。

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