「認知症の義父を罵倒する姑」とは別居せよ 嫁の無意味な犠牲は、美徳ではない

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……と申し上げたいところですが、言葉や努力で解決できるなら嫁姑問題など、とうの昔に死語になっているはずです。どのような事情で2世帯同居が始まったにせよ、同居が始まった以上は2世帯双方で、譲り合い精神が不可欠です。どちらか一方にその精神がないと、他方に多大な犠牲がかかるのですが、この譲り合い精神は、ちょうど双方が五分五分でなければならないのではありません。

ある時は4対6で、ある時は7対3になったりしますが、これも双方の譲り合い精神と知恵や、お互いに対する思いやりや遠慮を働かせ、微調整しつつ乗り越えて、それなりに意味のある同居生活が成り立つのです。

貴女のお義母様には、そのどれも見受けられません。それに私は、嫁に夫(貴女の義父)の悪口や愚痴を言う人は信用できません。口の堅い自分の友人に聞いてもらって心を軽くしたり、自分の心得違いを指摘してもらって反省材料とするべきで(友のいない人は山か川に向かって叫べばよい)、ましてや認知症の夫への愚痴を自分の息子のお嫁さんに言うなんて、お義母様は何を望んでおられるのでしょうか。

二川様、少し私が安易に回答をしているように聞こえるかもしれませんが、私なら、想像できるあらゆる不便と起こり得るトラブルを計算に入れてでも、今の同居しておられるお家の近くに引っ越し、再び別居します。それが借家かアパートになるのかは、その地域の環境で異なると思いますが、どんなに住環境が今より狭くなっても、その価値はあります。

ぐうたらなダメ亭主に尽くす妻の、深謀遠慮

私がよく知る姑の立場の善子さん(仮名)は、“誰の目にもぐうたらな亭主”によく尽くし、夫の愚痴をこぼすのを誰も耳にしたことがありません。たまに誰もいない(と善子さんが思った)ときに、派手にけんかをしていたそうですが、成人した子供たちの前でも絶対に、夫をぞんざいに扱うことはありませんでした。

結婚して別所帯の善子さんの娘が、思い余って善子さんに「お母さんはお父さんを立てすぎる。お母さんまでアホに見えるし、お父さんはますます調子に乗るし、そのやり方は間違っている」と言いました。

善子さんは、「私がお父さんをバカにするのは、その連れ合いの私もバカですと言っているようなもので、その夫婦の子供たちもバカですと他人に宣言するようなもの。特に息子のお嫁さんたち(皆別居です)には、私が言わなくともお父さんのダメなところは見えているけれど、何も私が『お義父さんをバカにしてください』とあおることはない。姑でさえ丁寧に接しているのだからと、表向きだけでもお嫁さんたちがお父さんをバカにはできないように、これからも注意しないとね」と言われたそうです。

このようなご夫婦を何組か知っていますが、そのような妻を見ていますと、「きっと私たちには見えないだけで、妻にそのように大切にされるに足る理由が彼にはあるにちがいない」と思え(実際にはどうみてもなさそうですが)、そのような2人は、“つまらない夫とそんな人と添い遂げている不思議な妻”には見えないものです。

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