繰り上げ返済を急ぐ人が気づいていない重要事実 返済期間や支払額減らしてもリスク高まることも

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試算してみましょう。

まず借入金3000万円、返済期間35年、全期間固定金利1.4%、元利均等返済、ボーナス払いなし、借入から10年経過後に300万円の繰り上げ返済(期間短縮型)を行った場合。総返済額は約113万円の削減となり、返済期間についても3年9カ月の短縮効果があります。

次に、300万円を今後25年かけて運用した効果を見てみましょう。株式投資で得た利益や、預貯金の利子、投資信託の分配金には税金が課されますので、その税率を20%と想定します。

投資資金を年1%で運用できたら約68万円、年1.5%で約108万円、年2.0%で約153万円の運用益になります。運用益が非課税である一般NISAなどへの投資だったら、年1%で運用できれば約85万円の運用益、年1.5%になれば約135万円、年2.0%なら約192万円の運用益が出ることもありえます。

定年退職時点のローン残高は?

投資の場合は不確定な要素も少なくありませんが、リスクを取らなければリターンがないことなども鑑みて、繰り上げ返済と投資のどちらが効果的なお金の使い方なのかは、考える余地が出てきそうです。

繰り上げ返済、資産運用で得られる効果
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最後に考えたいのが定年退職時点でのローン残高を想定して対応しておくことです。

ちなみに、老後の夫婦2人が受け取る年金収入の平均は月22万円(夫:会社員、妻:専業主婦)、最低日常生活費だけで22万円です。 

つまり、持ち家があってローン返済が終わっていて、やっと年金収入だけで生活費が成り立つ状況です。年金収入だけでローン返済を続けるのには無理があるのです。必ず定年退職時のローン残高を確認し、退職金や貯蓄で返せる範囲なのか、しっかりとシミュレーションしてから返済期間を決めましょう。退職金をローン返済に充ててしまった後、老後資金が残っているかどうかを考えることが大事です。

退職金で住宅ローンを返済してもいい例
水上 克朗 ファイナンシャルプランナー

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みずかみ かつろう / Katsuro Mizukami

慶應義塾大学卒業後、大手金融機関に入社。会社生活を通じ、14回の部署異動、11回の転勤、11年間の単身赴任、2度の会社合併を経験。これまでのさまざまな経験をするなかで、ファイナンシャルプランナーの知識を活かし、老後1億円資産の捻出方法を確立する。現在、ライフプラン(住宅・教育・老後の3大資金)、資産運用、保険の加入・見直しなどの観点からアドバイスを行う。CFP認定者(日本FP協会)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー。著書に『50代から老後の2,000万円を貯める方法』(アチーブメント出版)がある。

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