1999年に逝った男が綴ったサイトが今も残る意味 20年以上無管理「池田貴族心霊研究所」の役割

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事業として継続できないが、消滅させるのは忍びない。そこで担当者はこまめな管理が不要なコンテンツだけを選別し、何とか存続させる可能性に託したようだ。新たな場にビッグローブを選んだのは、おそくらはそのときに担当者が選べた裁量による偶然だろう。その偶然の選択が幸運にも息の長いサービスを引き当て、今に至っている──。

推測が続くのは、ミラーサイトを作った最後の担当者が今もなお不明だからだ。

メディアファクトリーを吸収したKADOKAWAには、『霊刻』のサイト運営に携わったスタッフはもう残っていなかった。代わりに、生前に池田さんのエージェントとして行動を共にしていたという人物・Hさんにつないでもらったが、Hさんもこの事業にはノータッチだったという。

今回の企画趣旨を伝えると「二十数年ぶりにサイトを拝見し、とても懐かしく当時を思い返しております」と話してくれた。池田貴族心霊研究所の存在は知っていても、ミラーサイトが現存していることは知らなかった。Hさんを通して一美さんにも確認してもらったが、やはりサイトには関与していないそうだ。

そうした現状を総合すると、やはり現在の池田貴族心霊研究所は誰も管理していない放置サイトとみなすのが妥当だと思われる。

その状態が20年以上も続いている。かなり珍しいことだ。

1993年に日本でインターネットの商用利用が解禁されてから約30年。膨大な数のホームページサービスやブログ、SNSなどが登場しては消えていくのを繰り返している。放置サイトの大半は数年、長くて10数年のうちに、サービスの撤退や支払い滞納などによる契約終了、あるいは何らかのきっかけで見つけた関係者による閉鎖などの道筋をたどる。そうした変化を無制御でくぐり抜けてきたわけだ。やはりかなりの幸運であることは間違いないだろう。

「役目を終えた灯台」

ただ、貴族さんのサイトは「廃墟」なのだろうか?

廃墟は長年誰にも使われずに荒廃した建物や場を指す。人気サイトだったkizoku.comからの引き継ぎが1年近くあったことを考えると、ミラーサイトもそれなりの知られる存在となっていたはずだ。更新がなくて書き込みができなくとも、往年のファンがアクセスしているかもしれない。

そう考えて、現在の「池田貴族心霊研究所」にリンクを張っている現在進行形のサイトを探したところ、remoteのファンサイト「remote museum」(http://www3.airnet.ne.jp/ochika/index2.html)にたどり着いた。管理人のおちかさんは1997年から貴族さんのサイトを訪れており、ドメインが移行する過程もすべてリアルタイムで経験している。

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