"動的な独占"こそが、技術革新を加速する ピーター・ティールが語る「成功する起業」

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――教えることができないものとは?

一番難しいのは、「どうやって新しいものをつくりだすか」ということです。これまでやってきたことを真似するのであれば、それは新しいと言えないわけです。人の使い方、組織のあり方など構造的な部分はまねることができても、自分独自のものをつくり出していくことは、教えられない。これは標準的なプロセスがあるわけではなく、独自で生み出していかなければなりません。

アイデアはどのように生まれるのか

――それこそがまさに「ゼロ・トゥ・ワン」ということだと思います。そういう経験は、どのように起こるのでしょうか。ティールさんの経験では、神の啓示のように降ってくるものですか。あるいは、何か化学変化が頭の中で起こるのでしょうか。

天から降ってくるわけでもなく、また自分の脳の中の化学反応でもありません。ちょうどその中間のような気がします。これまでいろいろな優れた会社の創立者たちを見てきましたが、非常な情熱を持って自分たちの仕事に取り組んでおり、そのプロセスの中で新しいアイデアが出てきたというふうに思います。

私自身、PayPalを創業したときの経験を振り返ってみても、最初に暗号とお金を組み合わせたらどうだろうか、と考えました。そして新しい通貨をつくるのはどうだろうか、それを携帯電話で処理できるようにしたらどうだろうか、というアイデアが出てきました。そのほかに、いかに流通業者と組んで行うか、また人々に受け入れてもらうにはどうするべきか、という計画も立てなければなりませんでした。何カ月ものあいだ、そうやって考えていく中で、ふと電子メールと組み合わせたらどうだろうかというアイデアが出てきた。

これこそがまさにPayPalの鍵となる考え方でした。その前の段階の仕事が必要ではなかったのではなく、そういった試行錯誤を経てきて、ある時、急にインスピレーションによって、自分自身が解放されたという言い方ができます。自分の脳の中の化学反応と、それから神の啓示といったもののちょうど中間のことが起きたのだと思います。

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