グーグルグラスはムダなプロジェクトなのか 鳴り物入り新製品は個人向け販売中止に

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たとえば集積回路(IC)は、フェアチャイルドセミコンダクターとテキサス・インスツルメントがそれぞれ別に発明したが、その市場を手にしたのはインテルだった。

グラフィカル・ユーザー・インターフェイス(GUI)とマウスを開発し、改良を加えたのはゼロックスを初めとする複数の企業で、それを普及させたのはアップルの初代マッキントッシュ・コンピュータだった。だがパソコン市場の勝者となったのはマイクロソフトだった。

「わかっていることよりわからないことの方が多いと言っていいだろう」と、技術革新と起業について研究しているハーバード大学のジョシュ・ラーナー教授(経済学)は語る。ゼロックスが優れたアイデアを生かせず、他社が製品化に成功したのはなぜか、簡単な答えはないと彼は言う。

問題解決のため、開発の重点を移行

企業はノーベル賞にも値するような基礎研究のたぐいから、技術的な土台はほぼできあがっている課題へと重点を移すことで、この問題に対処しようとしている。

また、会社組織のさまざまな部署に研究者を配置したり、IBMのように研究員を現場に送り込んで解決を要するのはどんな問題かを理解させようとする例もある。

「IBMの社員を顧客と組ませ、一緒に問題解決に取り組ませた。博士号はもっていてもきちんとした服装なんてもっていないような人たちばかりだったが」と、IBMのザック・レムニオス研究戦略担当副社長は言う。

だが研究員ほど辛抱強くない株主たちにとって、四半期ごとに目に見える形で利益を上げてくれるであろう新製品ほど安心できる材料はない。それが今の時点で手に入らないのであれば、少なくとも見通しを知りたいと思うのが人情だ。

先ごろ開かれた投資家との電話会見でも、グーグルのパトリック・ピシェット最高財務責任者(CFO)に対して大型投資についての質問が投げかけられた。

「改めて断言するが、賢い方法で、そして統制の取れたやり方で進めている」と彼は言った。「株主の資金を無駄遣いしないことを念頭に、私たちは前進している」。

(執筆:Conor Dougherty記者、翻訳:村井裕美)

(c) 2015 New York Times News Service

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