戦後77年、改めて学びたい「太平洋戦争」勃発の訳 1929年の世界恐慌がもたらした領土拡大政策

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その矛先として目を向けられたのは、中国です。中国には広大な領土と豊富な資源があったので、占領するには非常に魅力的な国でした。

それに、この時期の中国の国内状況はかなりめちゃくちゃでした。

中国大陸を1つにまとめていた清という国が弱体化して、もともと香港を植民地としていたイギリスを筆頭に、北からはロシア、南からはフランス、ドイツと、いろんな国が次々と清の広大な領土に手を出してきていたのです。それに、中国国内からも勢力が乱立するようになり、中国大陸はかなりの混乱状態になっていたのです。

中国東北部の満州を独立させて支配

こうした中で、日本はいろんな国と揉めながら、中国東北部の満州という地域を獲得します。

獲得したと言っても、日本領満州です!と完全に日本の一部にしたわけではなく、満洲国という1つの国として独立させました。ですが、満洲国とはいっても事実上日本の領土の一部と言ってもいいような状態でした。

皇帝こそ愛新覚羅溥儀という中国出身の皇帝を即位させましたが、満洲国内の政治は、現地で官僚となった日本人が行っていました。重要資源の採れる場所は国有化という形で政府が管理し、満州で採れた資源はほとんど日本に輸出されていたのでした。

こんなに回りくどいやり方をしたのには理由がありました。国際社会から非難されるのを避けたのです。というのも、満洲国が成立したのは1932年で、1918年に第一次世界大戦が終わったばかりでした。

第一次世界大戦は、ドイツが自国の領土を拡大するために、周りの国々に侵攻したことにより始まりました。

第一次世界大戦によって少なくとも1000万人以上の死者がでたので、世界全体として「もう戦争はやめよう」「戦争につながるから、他の国の領土を取るのはよくない」という風潮だったのです。

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