「犬猫殺処分ゼロ」実現への高いハードル 超党派の議員連盟が発足、今後の課題とは?

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「犬猫問題は地方自治体の自治事務になっているが、自治体で予算を組んでやるとすればどうしても『犬や猫より人間を重視せよ』と言われてしまう。やはり国が積極的に取り組んでいかなければならないのに、現在の国の予算は1億円程度であまりにも少ない」

民主党・新緑風会の安井美沙子参院議員は、国がより積極的に犬猫問題に関与すべきだと主張する。安井氏もハッピーゼロ議連のメンバーで、被災地の福島県から猫を2匹引き取っている愛猫家。10日の参院決算委員会では「動物収容・譲渡対策施設整備補助金」について質問した。

現状はNPOやボランティア頼み

「日本の犬猫の殺処分数は諸外国と比較して格段に多い。国として殺処分数の目標を立てるなど、なんとか数を減らせないだろうか。そもそもこの問題で環境省のコミットメントが低すぎないか。動物愛護管理法で国の責務が限定されているために、妨げになっているのか」

質問する際に安井氏は、資料として殺処分された犬や猫の死体が重なっている写真を委員会で配布した。「犬や猫は愛護センターに引き取りをされてから3日から7日の間に新しい飼い主をまち、出てこなければ殺処分される。その間は冷暖房もないところに押し込められ、衰弱して死んでしまう例もある」。

ところが国の補助率が2分の1と低いため、自治体が設備を整えようとしても、なかなか手をあげにくいという事情がある。安井氏は述べる。「国が予算を使わないから、全国のNPOやボランティアが代わって自腹で活動している。例えば2013年度の予算は1億7100万円が計上されているが、これを当時の引き取り数(約17.6万頭)で計算すると、1頭あたり971円になる。もう少し費用をかけて施設を改修するなどすれば、助かる命も増えるのではないか」。

動物愛護は何も動物のためだけではない。動物に優しく命を大事にする社会は、人間にとっても生きやすいはずだ。そういう意味で殺処分という悲しい運命の犬や猫がいなくなることを、誰もが祈らずにはいられないだろう。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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