ニコンは反論も「一眼レフ開発から撤退」の必然 市場規模が縮小する中、主役はミラーレスへ

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ニコン初のフルサイズミラーレスカメラ「Z7」
2018年に発売されたニコン初のフルサイズミラーレスカメラ「Z7」(撮影:今井康一)

カメラを含む映像事業はニコンの主力。2020年3月期には、コロナ禍による販売不振などから映像事業は営業赤字に転落。以来、プロ向けのミラーレスや交換レンズの拡充に注力すると同時に、「売上高1500億円でも黒字をだせる」(馬立稔和社長)体質に向け構造改革を進めてきた。

満を持して2021年12月に発売したミラーレスの最高級機種「Z9」は需要に生産がおいつかないほどの人気となっている。海外人員の削減など構造改革を進め、2022年3月期の映像事業の営業利益は190億円の黒字に転換した。

2022年4~6月期の映像事業の営業利益は前年同期比48%増の136億円で着地。為替効果が大きいものの、ミラーレスの開発に集中した成果としての「Z9」投入が効いている格好だ。

一眼レフ開発の余裕があるのか

それでも一眼レフ開発からの撤退を決めていないことについて德成CFOは「ミラーレスの進化を進めるなかで得られた技術によって、一眼レフの最高機種のさらなる高みを実現できる可能性がないこともない」とやや歯切れの悪い説明をした。

長い時間をかけて蓄積してきた一眼レフに関する技術が、ニコンの重要な技術資産であることは間違いない。しかし、プロ向けミラーレスカメラの普及という革命的な変化が起きたうえ、縮小がとまらないカメラ市場において、一眼レフの開発を続ける余裕があるとは思えない。

2025年度までの中期経営計画でニコンは映像事業について、2021年度実績より少ない売上高と、ほぼ同水準の営業利益率を掲げている。ニコンはこのまま一眼レフの開発中止期間が長引き、いずれひっそりと、一眼レフ開発からの事実上の撤退が行われることになるのだろう。

吉野 月華 東洋経済 記者

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よしの・つきか / Tsukika Yoshino

精密業界を担当。大学では地理学を専攻し、微地形について研究。大学院ではミャンマーに留学し、土地収用について研究。広島出身のさそり座。夕陽と星空が好き。

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