特産品で地方創生ができるという「幻想」 自治体がからむプロジェクトは失敗だらけ

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では、どうしてこのような商品が、次から次へと出てくるのでしょうか。背景には、特産品開発が、「地方の生産者」「加工者」「公務員」が中心となった「協議会組織」が中心となっていて、肝心の消費地の販売者や消費者の関与が希薄、という大きな構造問題があります。

つまり、基本が「作ってから売りに行く」という流れのため、初期の段階では販売者・消費者は、あまり声をかけられません。

そのため、価格を決める場合も、原材料費、加工費、流通費等を計算し、生産者や加工者がほしい利益を上乗せして割り出す、「コスト積み上げ型」であることが多く見られます。結果として、平気で「超高価格」になったりします。

もちろん、合理的な理由で高価格になっていれば良いのです。しかし、経費の積み上げだけで高価格になっただけというのは、「作り手」の勝手な都合であって、売ってくれる側や、買う消費者側にとっては受け入れられない話です。販売者も消費者も不在のままです。

そうすると、なんと、商品が高価格になったときの解決方法として「東京や、海外にいる富裕層に販売しよう」という話になったりします。ウソのような本当の話です。商品自体が富裕層に向けたものではない特産品を、単純に高値にするだけで「目の肥えた富裕層」に、売れるはずはありませんよね。

特産品開発に必要なのは「予算」ではなく「営業」

一方で、「高すぎて売れないのでは」と弱気になると、補助金を使って、各種経費を補助で減額して、見せかけの「安値」で販売をしたりするケースも後を絶ちません。そして、補助金が切れたら普通に値上げをします。当然、売れなくなります。

「協議会組織」の会議の行方によって、価格決定がブレるわけですが、その理由は、商品化の意思決定を行う際、責任者が合理的判断で行うのではなく、「協議会に参加する人たちの合議」を基本としていることにも起因しています。

地方自治体からの依頼などを受けて、特産品の取り扱いをした販売店などは、そのようにブレまくる地方の特産品開発に振り回されて疲れ果ててしまった経験を少なからず持っています。

例えば、前述のような「突然の値上げ」はまだましなほうかもしれません。最悪の場合には年度末になって予算がつきてしまい、急に製造終了をされたり、販売委託をしていた場合などは、「補助金減額」を理由に、急に支払いが中断されたりすることもあったりします。

「予算事業の世界の理屈」は、普通に商売をしている販売店にはまったく通用しません。そのような対応をしていると、販売店に「二度と取引したくない」と思わせてしまうのです。

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