大家が親に連絡も「LGBTQや高齢者」家借りる困難 拡大する日本の住宅弱者問題の現在地

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この間で民間企業もさまざまな見守りサービスを開発しており、それを利用することで室内での異変は発見しやすくもなっている。

「2017年から3年ほどで法的には一気に整備が進んだと言えます。残る問題は長く住み続けている入居者に異変や認知症など変化があった場合にどう対応するか。そこで、異変があった時に第一報を受けることの多い管理会社が地域包括ケアセンター、民生委員と情報を共有できないかと考え、福祉事業者に聞き取り調査をしたのですが、現時点では個人情報の壁もあり、この部分は進んでいません」と、2017年から住宅確保要配慮者などに関する勉強会を続けてきた、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(以下全宅連)不動産総合研究所の岡崎卓也氏は話す。

福祉サイドが情報共有に後ろむき?

入居者がどのデイサービスや病院にかかっているがわかっていれば、入居者に異変があった時に誰に連絡すべきか、何を疑うべきかがわかるはず。メリットは多いと思うが、福祉サイドからは、なぜ不動産の管理会社にそうした情報が必要なのかと訝る声も出たという。

賃貸を扱う不動産会社の仕事は大きく分けて仲介と管理があり、管理は契約以降、入居者にとって非常に身近な存在になる。孤独死の第一発見者になることが多いのも管理会社である。だが、外目には仲介業務が目立ち、入居者との関係が見えにくい。それが不動産会社には関係ないという判断につながるのだろう。以降、問題は頓挫したまま。居住者の幸福を考えると、福祉と不動産はもっと仲良くすべきだろう。

高齢者の入居に前向きに取り組む不動産会社も増えてきている。老人ホームを経営するなどで知識や経験を積んだ不動産会社もあれば、数多くの物件を管理している会社では空室を考えると、いずれは高齢者の入居に取り組まざるを得ないと考え始めているそうだ。

一方、住宅セーフティネット法自体は失敗と評価せざるを得ない。この法律は「住宅確保要配慮者を拒まない住宅を登録」「借りる人を支援」「住宅改修のための助成を行う」という3本の柱からなるのだが、なにしろ登録物件数が極端に少ない。

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