「なまり節ラー油」は、どのように生まれたか 高校生が動けば、地域活性化が動き始める

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ビジネスプランコンテスト以外でも、高校生による地域活性化活動の動きは広がっています。イノベーション教育を推進する東京大学i.schoolの卒業生の小川悠氏が代表を務めるi.clubの活動は自由な発想を促進するデザインシンキングの手法を使っています。

小川氏は、若者の地域離れが深刻化する原因について、若者が地域の良さを理解する機会や地域との繋がりをつくる機会がないこと、自分たちで未来を作る方法を学んだことがないことにあると考え、次の様な体系的な活動をしています。

① 高校生に地元でインタビューやフィールドワークで、地元の良さを理解する機会を提供。この際に大人と活動を共にして、縦のつながりを確保。
② 学校の枠を越えた、地域の高校生同士の、横のつながりをもつ機会を提供。
③ デザインスクールにおけるイノベーション教育の知見を活かし、ユニークな手法を織り交ぜながら、「新しい価値」を作り出す方法を考え、実践する機会を提供。

 

「なまり節ラー油」の開発を手掛けた高校生たち

i.clubに参加した高校生が宮城県気仙沼において地元の食文化を守ろうと生みだしたヒット商品が「なまり節ラー油」です。

気仙沼市は、宮城県の最北端に位置する漁業のまち。豊かな漁獲と卓越した加工技術で有名です。生鮮カツオは日本一の水揚げ量を誇っています。しかし、地元に大学や都市的な娯楽はなく、若者の地域離れが深刻な問題となっています。

そんな中で、地元の進学校、普通科、水産高校の高校生が集まり、i.clubの活動がはじまります。「なまり節」とは、カツオ節のいぶし時間の短い、半分生の状態の食品で、気仙沼で伝統的に作られてきたドライフード。近年は一般の食卓から遠ざかってきており、地元の若者の間でも、「おじいさんやおばあさんが時々マヨネーズをかけて食べているもの」との認識でした。

しかし、高校生たちが再度良く味わってみると、その風味、香り、食感に魅了され、「地元の食文化を守りたい」との想いが芽生えます。i.clubでは、全国流通する食品にするべく、試行錯誤を繰り返し、その過程で、ラー油との組み合わせによる新食品開発・販売のプロジェクトが生まれました。

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