ソフトバンク、米スプリント復活の綱渡り 2500億円の減損損失が意味するもの

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2月10日の決算会見。孫正義社長の背後に映るのはスプリント復活を託したマルセロ・クラウレCEO

「いずれは世界一になるという高い志は持っている」――。スプリント買収を発表した2012年当時、ソフトバンクの孫正義社長は意気揚々と語っていた。が、米国の携帯電話事業で生じたさまざまな誤算が、明確な数字となって表れている。

1.8兆円を投じて傘下に収めた米携帯業界3位のスプリント。第3四半期(2014年10月~12月)決算では、商標権や固定通信事業の資産を対象に21.3億ドル(約2500億円)もの減損損失を計上し、営業損益は25.4億ドルの赤字に沈んだ。

ソフトバンクは会計基準の違いを理由に、この巨額減損を2014年度の第3四半期(2014年4月~12月)には反映しなかったが、2月10日の決算会見で孫正義社長は、「(ソフトバンクが適用している)国際会計基準では減損したくてもできないが、減損したつもりで経営すべきだ。厳粛に受け止めている」と神妙な面持ちで語った。

株価下落に格付け引き下げ

スプリントが減損の認識に至った理由は複数ある。秋口には6ドル台で推移していた株価が12月に入って一時3ドル台に下落したこと、大手格付け機関のムーディーズが12月に信用格付けを引き下げたことなど。事業計画についても、「(2013年7月に子会社化した)当初の想定と比べて収益も契約者数もARPU(1契約当たりの月額収入)も下回っていた」(ソフトバンクの君和田和子執行役員)。こうしたことから減損の兆候あり、となった。

スプリントが適用している米国会計基準では、償却をしていない無形資産について個別に検証がなされる。ここには周波数の免許を示す「FCC(連邦通信委員会)ライセンス」やスプリントブランドの「商標権」が含まれる。

FCCライセンスは、子会社クリアワイヤが保有する2.5ギガヘルツ帯の周波数を中心に399億 ドル(4.7兆円)がバランスシートに計上されている。同周波数帯は高速のデータ通信に適しており、周波数オークションを採用する米国ではむしろ価値が高まる傾向にあるため、問題はなかった。一方、ソフトバンクが買収した時にスプリント側に計上した商標権(52億ドル)は19億ドルの減損、第3四半期で3億ドルの赤字だった固定通信事業も、設備などで2.3億ドルの減損を行った。

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