【産業天気図・鉄鋼】電炉は一服だが、高炉は2ケタ増益の勢い続き『晴れ時々曇り』

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2004年度は自動車、造船、産業機械向けが依然として好調なうえ、設備投資の回復で建設向けも回復、粗鋼生産は1億1300万トン超と過去3番目の高水準に達する模様だ。こうした中、鉄鋼業界は久方ぶりの我が世の春を謳歌。「業界全体で1000万トンもの鋼材不足」との声が上がるほどの需給逼迫を背景として、値戻しの実現に成功した。新日本製鉄、JFEホールディングス、住友金属工業、神戸製鋼所が軒並み最高益を更新するほか、電炉でも最大手の東京製鉄が14年ぶりに最高益を記録する見通しだ。
 05年度も自動車、造船など製造業向けを中心として高水準の需要が続く見込み。鉄鉱石、原料炭などの原料価格は世界的な粗鋼生産の好調で05年度も大幅に上昇、業界全体では1兆円に達する見通しだが、高炉各社では「04年度より価格転嫁の環境は整っている」(高炉幹部)として鋼材価格への転嫁を進める考え。高炉各社の依存度が大きい自動車など大口ユーザー向けのヒモ付き価格は、国際価格に比べてなお1~2割程度割安な水準であり、値戻しが進む公算が濃厚。05年度も高炉各社は2ケタ増益を達成する可能性が高いだろう。
 一方、建設向けは一部でマンションの過剰感が出ているうえ、戸建て住宅も住宅ローン減税の縮小による反動減が懸念されている。オフィスビルなどは高水準の動きが続くものの、国内の工場向けなどは一服。土木は一段の減少が予想され、減退に転じる公算が大きい。H型鋼、棒鋼など建設向けの価格は、需要の減少懸念を反映して上昇基調はすでに一段落。建設向けの比重が高い電炉メーカーにとって、05年度は前年度並みの収益を維持できるかどうかの正念場となる。
【野口晃記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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