日本に自動車生産は残るのか?--トヨタ、日産の賭け “最後”の国内工場(下)

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 九州にはもう一つ、グループの最新鋭工場がある。九州工場と同じ敷地に09年末稼働した、日産車体の九州工場だ。同工場ではフレーム構造のSUV(スポーツ多目的車)と、モノコック構造の乗用車が同じラインで流れてくる。ラインは一度分岐し、エンジンや足回り部品など工程の違う作業を行い、また合流する。

工場は直線ラインが常識であり、ラインに分岐があるのは極めて珍しいことだ。日産車体九州工場は中東向けの輸出専用車「パトロール」など、大型車の生産を担っているが、小型車も含めて、多様な車種生産に対応できる。

同工場は稼働率を高めるために、わずか1年間に4車種を新規に立ち上げた。渡辺義章・日産車体社長は「過去にない偉業。おそらく今後もないだろう。グループのノウハウを集結した結果だ」と胸を張る。

日産車体を合わせた九州の生産能力は年50万台を超える。つまり今後、日産の国内生産の約半分を九州が担う。現在日産は追浜工場で生産する小型車「ノート」の九州工場への移管も検討している模様だ。

日産が九州シフトを進める背景には、その地の利がある。釜山200キロメートル、上海1000キロメートル。そして東京1100キロメートル--。地理的に九州工場は、東京よりもアジアの主要都市に近い。アジア諸国は一般的に製造コストが安く、品質面でも急速に日本を追い上げている。カルロス・ゴーン社長の言う、LCC(リーディング・コンペティティブ・カントリー=最も競争力のある国)からの部品調達。九州地区はそのLCC調達の先鋒に立つことになる。

これまでアジア諸国では、日本から部品を持ち出し現地で組み立てるKD(ノックダウン)生産を行ってきたが、日産車体の渡辺社長は「今後は海外で部品を作り日本に送る、“逆KD化”以外に生き残る道はない」と言い切る。

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