どうなる?パナ、シャープ、東芝のテレビ事業 「海外撤退」「4K集中」など進めて"局地戦"に

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東芝も海外でのブランド供与に踏み込む。

「つまり自前ではこの事業をやらないということです」。

1月29日、東芝の前田恵造専務は、北米テレビ事業からの事実上の撤退を表明した。開発・販売を終了、今後は台湾コンパルにブランドを供与する。欧州やアジアでのブランド供与も協議中。海外全面撤退もありうる展開だ。

国内は大半がODMに

東芝のテレビ部門の売上高は全社の3%強だが、2012年3月期から赤字が続く。

すでに同社の国内向けは大半がODM(相手先ブランドによる設計・生産)。一部をインドネシア工場で生産しているにすぎない。今後海外事業をすべてブランド供与に切り替えれば、インドネシア工場やエジプトの合弁会社も手放すとされ、国内ではODMのみとなる。

その先行例となるのが日立製作所。自社生産は12年にやめたが、今でも国内の「日立ショップ」で販売を細々と継続する。テレビは情報端末なので、将来ほかの分野に応用できるかもしれない、との考えがあるからだ。

一方、東芝は国内での事業継続にこだわるが、狙いはテレビ技術の医療用画像診断装置などへの応用。今後は日立と同じ道をたどりそうだ。

しかし、自社生産を続け、高精細・大型化で差別化を図っても、すぐ消耗戦に陥る構図に終わりはない。

IHSグローバルの鳥居寿一シニアディレクターはこう解説してみせる。「今後は4Kテレビも、間違いなくコモディティ化する。日本のテレビメーカーはこれまでも、勝負できる市場を絞る"局地戦"を心掛けてきたが、さらなる局地戦に追い込まれているのが今の状況だ」。

ブランド力でほかの日本勢を圧倒するソニーも、テレビは10期連続赤字が続いた。やっと今期黒字化の道筋が見えつつあるが、今まで奏功したのは、米国での家電量販大手ベストバイへの販路絞り込みなど、限られた地域での徹底的な展開だった。

とはいえ、戦える場所は、どんどん減っている。勝負の場所をどう絞り込み、事業再建をどう図るのか。テレビ事業存続の意義もあらためて問われることになる。

「週刊東洋経済」2015年2月21日号<16日発売>「核心リポート01」を転載)

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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