日立がHDD事業を米ウェスタン・デジタルに3500億円で売却、狙いは社会インフラ系事業の強化

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日立がHDD事業を米ウェスタン・デジタルに3500億円で売却、狙いは社会インフラ系事業の強化

日立製作所がハードディスクドライブ(HDD)事業の売却を決めた。相手はHDD業界トップの米ウェスタン・デジタル(WD)で、日立はHDDを手掛ける100%子会社の日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST)の全株式を9月末までに売却する予定だ。

売却額はトータル42億5000万ドル(約3500億円)。うち35億ドル(約3000億円)が現金で支払われ、加えてWDの株式2500万株(7億5000万ドル相当)を日立は保有することになる。2500万株はWDの発行済株式総数の約10%で、日立がWDの筆頭株主となる予定。取締役も2名派遣する。
 
 今回売却するHGSTは、2003年、日立が20億5000万ドルを投じ、小が大を飲み込む形でIBMのHDD事業を買収して発足させたもの。デジタル分野の強化へと大きく舵を切った庄山悦彦社長時代に行われたM&Aで、日立の歴史上、最大の買収案件だった。しかし、業績は買収初年度から大苦戦。07年度までに累積で1200億円超の赤字を垂れ流し、同じく庄山氏が強化を進めた薄型パネル事業と並び、日立の業績の足を引っ張る問題事業とされてきた。

日立は、プラズマ、液晶を含む薄型テレビ用のパネルからはすでに撤退。HGSTが手掛けるHDD事業も、リストラによって08年度に黒字化を果たしたとはいえ、市況型製品でコスト競争が厳しく、また目まぐるしく変化する事業環境のもと、巨額の投資判断を求められる点で、手に余る存在となっていた。

しかも、日立は10年に策定した中期計画で、「社会イノベーション事業」と呼ぶ社会インフラと電力、ITの融合分野を成長エンジンに位置づけると宣言。12年度までの3年間で、経営資源の総額2兆6000億円のうち、6割に相当する1兆6000億円を同分野に傾斜配分する、と繰り返し説明している。事業ポートフォリオの見直しも、この線で着々と進んでおり、今回のHDDのような市況型事業は、「遠ざけるべき事業」として売却、ないしは出資比率の引き下げが既定路線となっていた。

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