ベッカー教授、ポズナー判事の常識破りの経済学 ゲーリー・S・ベッカー、リチャード・A・ポズナー 著 鞍谷雅敏、遠藤幸彦、稲田誠士 訳~社会的なテーマに卓越した分析

ベッカー教授、ポズナー判事の常識破りの経済学 ゲーリー・S・ベッカー、リチャード・A・ポズナー 著 鞍谷雅敏、遠藤幸彦、稲田誠士 訳~社会的なテーマに卓越した分析

評者 原田 泰 大和総研専務理事チーフエコノミスト

 本書は、二人の碩学の人気ブログのうちから、日本の読者が関心を持ちそうなものを選んで訳出したものだ。分析の対象は、男女の産み分け、臓器売買、不平等、治安維持の民営化、国の文化と経済、地球温暖化から世界金融危機に至るまで広範である。いま旬のテーマで洞察力を見せつける。なぜ、そのように問題をとらえることができ、これほど明晰に分析できるのかと、随所で驚かされる。

たとえば、男女の産み分けだ。倫理的問題なしに男子が増えた場合、望まれて生まれた女子はよりよい扱いを受けるし、より多くの男子の競争によって女子の価値が高まり、長期的には、両親は女子の価値が高まったことに反応して産み分けを考え直すようになるだろうという。

しかし、第�部の金融危機となると、さすがの分析力もやや鈍るような気がする。今回の危機がなぜ予見できなかったかについての分析も、読むには値するが、他の卓越した見方の部分のようには感動できなかった。

欧州の長期経済停滞についての記述も同じように感じざるをえなかった。移民は経済全体のレベルを引き上げるには有効だろうが、一人当たりの所得を引き上げるかはわからない。

また、欧州大陸の大国は日本よりはましとはいえ、経済成長率が低い。さらにいえば、社会福祉支出の多い北欧諸国の経済成長率が他国より高いのはなぜかについても、言及して欲しかった。限界税率の違いが雇用の違いを説明するとの記述があるが、日本は限界税率を下げた後に雇用が低迷し、成長率が低下している。

もちろん、著者二人にすべてを分析し尽くされては、他のエコノミストの仕事がなくなる。世界は碩学二人にとっても、まだまだ複雑だと考えることにすればよいのだろう。

Gary S. Becker
米シカゴ大学経済学部、ビジネススクール、社会学部各教授。1930年生まれ。1992年にノーベル経済学賞。

Richard A. Posner
米連邦第7巡回区控訴裁判所判事。米シカゴ大学ロースクール教授。1939年生まれ。

東洋経済新報社 2310円 220ページ

    

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