健康診断「空腹時血糖値が正常」でも安心できぬ訳 血圧、コレステロール、血糖値の数値の正しい見方

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コレステロールの塊が血管の内側にたまっていくと、“山(火山)”ができて、血流を妨げます。この山が噴火を起こすと、中のコレステロールが飛び出て血液と混ざり、一気に血栓(血の塊)がつくられます。すると、一瞬で血管が詰まるのです。

この山は一度できたら引っ込みません。よく「薬で治りますか」「薬を飲んだら狭まった血管が元に戻りますか」と患者さんから聞かれるのですが、今の医学では難しいのです。

でも、山ができてしまっても噴火させなければ支障はありません。例えば、血管の内側の山がだんだんと大きくなって、やがて血管を詰まらせてしまったとしても、そういう詰まらせ方であれば、救急車で運ばれるような事態になることはほとんどありません。あるとき心臓の検査を受けたら、たまたま血管が詰まっていることが見つかるというようなことが多いのです。つまり、生活に支障はないわけですね。

支障がないなんてことがあるのか、とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、生き物の体は非常によくできているもので、血管がゆっくりと詰まる場合は、隣にある血管が「助け舟」を出し、ある程度代償してくれるので、緊急を要するようなことはそう起こりません。

怖いのは、あくまでも“火山”が突然噴火すること。そしてこの噴火は、三大生活習慣病がコントロールできていない方に起こりやすいことがわかっています。ですから、火山を死活化させることが大事です。

血圧、コレステロール、血糖値のコントロールが大事

では、死活化させるために大事なことは何かといえば、動脈硬化を進め、火山を噴火させる要因になるものを取り除くこと。つまりは、血圧、コレステロール、血糖をコントロールすることです。

「健康診断で血糖値が引っかかりました」「コレステロールが高いと言われました」「血圧が高いと言われました」――と、外来にいらっしゃる患者さんは少なくありませんが、話を聞いていると「なぜいけないのか」をあまりわかっていらっしゃらない人が多い印象があります。

「なぜいけないのか」というと、血管をボロボロにして心筋梗塞や脳梗塞といった“火山の噴火”を起こしてしまったり、大動脈破裂などを起こして突然死の原因になったりするからです。

さらには、全身の臓器に酸素を送り届けているのが血管なので、脳の血管が障害されれば認知症にもなりますし、目の血管が障害されれば目が見えなくなり、腎臓の血管が障害されれば腎臓が機能しなくなり、足の血管が詰まれば悪くすると足を切断することにもつながります。神経への血管が傷つけば、熱い、痛いといった感覚が鈍くなったり、しびれが出たりといった神経障害を起こすこともあります。

こうしたリスクがあるため、たかが血圧、たかが血糖、たかがコレステロールとスルーするわけにはいかないのです。

次ページどのくらいになったらリスクは上がる?
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