菅首相「3月作戦」の成否

菅首相「3月作戦」の成否

塩田潮

 3月1日、予算の年度内成立が確実となったとき、菅首相は「さあ3月作戦だ」と元気に口にしたという。

 だが、実際は予算関連法案成立のメドが立たず、6日に前原外相辞任という展開となり、ささやかれていた3月危機が現実となりそうな気配だ。

 首相が政権運営力や統治能力を喪失して墜落寸前で迷走飛行を続ける「ダッチロール」の状態に陥りつつあるように映る。菅首相が実質的に権力を失って「レームダック」となれば、与党内で政権を支えてきた勢力や助ける人たちが、この先、「泥船政権」を避けていっせいに離れ始める可能性もある。

 外見上は政権が存続していても、事実上、命脈が尽きる状態を「立ち枯れ」というが、万策尽きた首相が無様な倒れ方をする「野垂れ死に」という終幕もあり得る。立ち直りの見込みがゼロとなれば、政権は「死に体」となるが、そうなると、与党内からも「安楽死」を求める声が上がるかもしれない。

 野党は予算関連法案の成立を阻むことで政権を追い詰める「予算人質論」を武器に解散実施や首相退陣を要求しているが、法案成立と引き替えに菅首相を退陣の花道に向かわせる「予算花道論」が与党内で拡大するだろう。

 だが、菅首相の政権への執着心はきわめて強い。辞任はこれ以上の延命は不可能と当人が観念したときだけだ。絶体絶命となれば、「一か八かの解散」に走ると見る人は多い。安楽死戦法は八方塞がりの現状を首相に知らしめて死を覚悟させるのが狙いだが、菅首相は観念しそうにないから成功の確率は低い。

 菅首相の「3月作戦」にも妙案があるとは思えないが、若い頃から口癖の「一点突破、全面展開」で乗り切る腹ではないか。

 その一点は、連立組み替えか解散か政界再編か。いずれにしろ、勝負のポイントは国民の支持の行方だ。菅首相への期待が続けば「3月作戦」は成功するが、国民がそっぽを向けば、「3月危機」が現実となる。

 攻守双方とも、命運のカギを握っているのはいつの場合も民意、という認識が必要である。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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