第5回 新・企業力ランキング(東洋経済・財務評価2010年度版) 任天堂が3年連続のトップ、2位以下を大きく引き離す

第5回 新・企業力ランキング(東洋経済・財務評価2010年度版) 任天堂が3年連続のトップ、2位以下を大きく引き離す

「いい会社」とは何だろうか?

顧客ならすぐれた商品やサービスを安価に提供してくれる会社だろう。株式投資家であれば、株価が上昇する会社は魅力的に映るかもしれない。従業員なら給料をたくさんもらえる会社、国や地方自治体は税金をたくさん払ってくれて雇用を確保してくれる会社だろう。NPOなどでは寄付をたくさんしてくれる会社かもしれない。

このように「いい会社」の定義は見る人にとってさまざまだが、すべてのベースにあるのが財務力だ。未曾有の大災害となった東日本巨大地震。地震発生後に多数の上場企業が被災地への支援を発表している。億円単位の義援金や自社製品提供などが中心だが、こうした貢献も本業で十分な利益をあげていなければ実際に行うことはむずかしい。財務力は企業がさまざまな活動をするにあたりなくてはならない力である。

さて、今回ご紹介する「新・企業力ランキング」は財務データを使い、企業の真の力を探ろうというものだ。今回で第5回目となる(過去4回は雑誌『東洋経済統計月報』で発表)。

■次ページ以降にランキング一覧
・年度別上位20社 --2ページ
・業種別上位企業のシェア --3ページ
・上位1000社 --4ページ
・業種別上位(その1) --5ページ
・業種別上位(その2) --6ページ

この評価は成長性、収益性、安全性、規模の4つのカテゴリーを掲げ、20評価項目の財務データを多変量解析の「主成分分析」で相対評価を行った。さらに、それぞれの得点を合計して総合ランキングを作成している。

評価作成は東洋経済の財務・企業評価チームが行い、明治大学商学部・大学院商学研究科の山本昌弘教授にアドバイザーをお願いした。ランキング対象企業は10年9月1日時点で上場している一般事業会社(銀行、証券、保険、その他金融は除く)だ。

では、総合ランキング結果を見ていこう。全上場企業のトップは3年連続で任天堂だった。総合得点は3782点で2位以下を大きく引き離した。成長性892点、収益性933点、安全性957点、規模1000点といずれも高得点だった。

10年3月期の各財務指標はROE17.1%や有利子負債ゼロなど高い数値が並んでいる。ただ、「ニンテンドーDS」、「Wii」などに一部陰りが見られ、売り上げは大幅に減少。かつての圧倒的な強さは少しずつなくなりつつある。

「iPhone」や「iPad」などの登場でゲーム業界はさらに激しい競争が予想される。2月に発売した「3DS」などの新しい分野を切り開くことができるかが、今後も強い財務体質を維持するための大きなポイントとなりそうだ。

2位は前年3位のヤフー(総合得点3635点)。成長性936点、収益性1000点、安全性904点、規模795点と成長性、収益性の高さが際立つ。

規模は大手企業と遜色ないレベルまで高まってきた。すでに大企業となった中で、今後も成長力を維持していくことができれば次回は初のトップも射程圏内に入ってきそうだ。

3位は昨年2位の武田薬品工業。総合得点は3611点で成長性775点、収益性885点、安全性951点、規模1000点とバランスよく得点した。

同社は1回目、2回目が総合1位、3回目3位、4回目2位と上位の常連。高い収益力に加え、実質無借金と安全性の高さにも定評がある。新薬開発の遅れなど先行きに不透明な面もあるが、現状の財務体質の強さから高い評価となった。

4位は国際石油開発帝石が3603点で初めてのランクインとなった。続いて、5位NTTドコモ(3599点)、6位アステラス製薬(3580点)、7位KDDI(3573点)と大手企業が続く。

中堅企業で上位に入ったのが9位のアクセル(3536点)。描画表示用・音源用LSIの研究開発型ファブレス半導体メーカーで規模的には大きくない。だが、ROE28.3%、有利子負債ゼロなどで高評価になった。業種別でも電気機器/精密機器でキヤノン、リコー、ファナックと有力企業を抑えてトップとなった。

これまでは順調に成長してきた同社だが、主力のパチンコ向けの新台需要低迷などで11年3月期は売り上げが急減する見込み。来年は大きく順位を下げることになりそうだ。

続いて業種別も見ていこう。総合ランキング1000位までを対象に業種別に最大上位20社のランキングを紹介している。一部の業種は総合1000位に20社入っていない場合もあり、10社程度になっていることもある。

この中で上位にランクインした企業が多かったのが情報・通信業だった。業種別上位のヤフー、NTTドコモ、KDDI、日本電信電話は全体ランキングでも10位以内。20位のベルパークも全体99位と全体ランキング100位に20社も入った。
情報・通信業は上位100位(101社)のうち19.8%を占める。全対象1006社では120社と10.8%なので上位企業にこの業種が多いことが分かる。
 
 各業種のトップ企業も一覧にまとめた。大企業が多い中、すでにご紹介した電気機器/精密機器トップのアクセル(全体9位)、サービス業トップのディー・エヌ・エー(全体10位)は中堅企業でありながら業界首位となった。

冒頭でも述べたように「いい会社」はそれを見る人によって異なることが多い。だが、いずれの場合も財務力という基盤は不可欠。今回、ご紹介したランキングはさまざまな立場から見た「いい会社」を本当に実現する力があるかを判断するためのデータとして活用できるだろう。

■ランキングの作成方法

明治大学商学部・大学院商学研究科の山本昌弘教授をアドバイザーに、東洋経済が保有する財務データを使い、多変量解析の主成分分析手法で成長性、収益性、安全性、規模の4つの分野で評価した。

対象会社は2010年9月1日時点に上場している一般事業会社で、銀行、証券、保険、その他金融を除き、各新興市場を含む。10年3月期までに上場後2期以上ある会社が対象で、データは各項目とも3期平均(最低2期平均)で連結優先(1期しかない項目は除外)。変則決算がある場合は6カ月以上の決算期のみ使用。売上高、営業利益、経常利益、当期利益などのフロー項目は12カ月に調整した。

分析手法として使った多変量解析の主成分分析は多数の変数を要約し、少数の情報で全体の特性を代表させることができる。財務データのような多数存在する項目を少ない情報に集約でき、総合評価が可能になる。

主成分分析で求められた第1主成分得点を偏差値化し、異常値をならすために最大70、最小30に変換。さらに最高1000、最低500に調整して各分野の得点とした。4つの評価分野の各得点を合計したものが総合得点となっている(総合得点の最高は4000点)。

(財務・企業評価チーム 岸本吉浩)

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