幸之助は「売りたい価格」を認めなかった 素人に「いくらで買うかな」と尋ねた

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昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部) 

 

昭和49年(1974)に、松下電器は、パナカラー「クイントリックス」というテレビを発売した。このテレビは、新しいブラウン管を使用していて、大幅にコントラストや明るさが改善されただけでなく、シャーシ部分も一新したことで、いままでの松下電器製のテレビに比べて圧倒的な省エネ性能を実現した。

50万台を売った大ヒット商品

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もう40年ほど前だから、ほとんどの人はご存知ないだろう。50代以上の方は、覚えておられると思うが、このテレビのコマーシャルが、大いに評判になった。

坊屋三郎という、61歳の人気のコメディアンを起用した、背の低い坊屋が、この製品にもたれるようにしながら、眼鏡越しに、相手は、背の高い、だから、テレビに乗りかかるように手を置いた外国人に、日本語的に、クイントリックスと言う。

もちろん、外国人は流暢な発音で言う。坊屋が、それは違うという表情で、クイントリックスと言う。また流暢な答えが返ってくる。

むかついたように坊屋が、「英語でやってごらんよ」という。当然、また外国人が、流暢に発音する。このやりとりが繰り返され、最後に、坊屋が「ク・イ・ン・ト・リック・ス」と言って、最後にひと言、「外人だろう、あんた」。

これが視聴者に受けた。クイントリックスの商品名は幅広い世代に認知され、50万台を売る大ヒット商品になった。

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