アラサーのための戦略的「人生相談」--この連載はマニュアル的すぎませんか?(その1)

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 したがって、一見無機的なマニュアルに従っていても、出してくる戦略は、本来かなり属人的な色彩の濃い個性的なものになるはずなんです。逆に、出した結論が「誰が出しても似たような金太郎飴的なもの」だとしたら、それはマニュアルを使う人に問題があるんです。はっきり申し上げて、個性を持たない人はマニュアルを使うのではなく、使われてしまうことになるでしょうね。

この傾向は「リスクに関する」領域に顕著です。

日本人は平均して「リスク」に関する感覚が鈍いと言われていますし、実際「リスク管理」のスキルがいまだに低いままです。それは、ここ1年の間に起きた諸々の事件からも明らかですね。

こうした日本人の性質はかなり歴史的な背景に拠る部分が大きい。何しろ、四方を海に囲まれ、国境という感覚が日常にない、幸せな国だったんですから。

でも、交通機関の発達により国が地政学的に孤高を保つのが不可能になり、「幸せを保証していた条件」は消滅してしまいました。現在は国が開かれたものとして、社会の流動性がますます高くなっていますから、国内の政策ひとつとっても、国内事情だけで決められなくなっているでしょ。条件が変わった以上、新しい条件に適合しなければならないのは常識です。

つまり「リスク」に関する意識を持ち、そのスキルを磨き、学習する必要があります。悲しいことですが、もうかつての牧歌的な「安全な国ニッポン」は幻想でしかありません。むろん、それが現実である以上、直視しなければなりません。
 
リスクという言葉の語源

マニュアルの話に戻ります。トップマネジメントの方は、マニュアル化できない決断にかかわる部分にエネルギーを集中させるためにも、マニュアル化できる部分は極力マニュアル化し、スタッフに任せるべきです。任せられないのは、任せる技量と度量がないだけです。これがマニュアル化する第三の目的です。

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