英「ジョンソン首相」身内の裏切り招いた問題思考 相次ぐスキャンダルに閣僚等約60人が辞任宣言

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7日、官邸前で辞任の意向を明らかにしたジョンソン首相。自分の業績を列記し、2019年の総選挙で保守党に票を入れてくれた国民や自分の面倒を見るスタッフに感謝した。また、党首辞任の直接的理由として、保守党議員が「群れのようになって」辞任を希望したことをあげた。だが、保守党内でジョンソン首相への辞任コールがなぜこれほどまで高まったのかについては、一言の言及もなかった。

保守党議員の多くにとって、ジョンソン首相を支持したのは、その気さくさと数々のジョークによって国民の間で人気が高いジョンソン首相がいれば、「総選挙に勝てる」からだった。しかし、6月末の2つの補欠選挙で、保守党の議席はいずれも労働党とリベラル系野党の自由民主党に奪われた。「ジョンソン首相なら、勝てる」という見込みが薄くなった。

しかし、選挙で勝てるかどうかばかりが理由ではなかった。辞職した女性議員が辞任の手紙の中で書いたように、「もう一緒にワルツを踊る気持ちにはなれない」という感情が強まっていたのである。ここ2〜3日のテレビの街頭インタビューを見ると、「去る時が来たのだと思う」「もうダメだ」「辞職するべき」「信頼感を失った」という声が圧倒的だ。

次の首相になるのは誰か

目下のイギリス人の関心は、次の首相は誰になるのか。保守党内ではまだ特定の候補者に絞り切れていないが、党首選挙の流れに従うと、新たな党首・首相が決まるのは秋になる。

ただ「一刻も早く、ジョンソン首相に去ってほしい」という与党議員も多く、そうなった場合、ラーブ司法相・副首相が臨時の首相になる可能性がある。党首選にはジャビド前保健相、スナク前財務相、トラス外相、ウォレス国防相などが参加するとみられる。

では、首相でなくなった後のジョンソン氏はどうなるのか。これだけは心配しなくてもよいかもしれない。首相就任後は活動を控えていたジャーナリズムの世界に戻り、原稿を書いたり、本を出版したりと大忙しになりそうだからだ。

元官邸の広報責任者アンディー・クールソン氏は、タイムズ紙の記事の中で、「これまでで最速の首相回顧録が出るだろう」と予測している(7月6日付)。

小林 恭子 在英ジャーナリスト

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こばやし・ぎんこ / Ginko Kobayashi

成城大学文芸学部芸術学科(映画専攻)を卒業後、アメリカの投資銀行ファースト・ボストン(現クレディ・スイス)勤務を経て、読売新聞の英字日刊紙デイリー・ヨミウリ紙(現ジャパン・ニューズ紙)の記者となる。2002年、渡英。英国のメディアをジャーナリズムの観点からウォッチングするブログ「英国メディア・ウオッチ」を運営しながら、業界紙、雑誌などにメディア記事を執筆。著書に『英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱』。

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