日銀トレードが生む、マイナス金利の異常さ 短期金利のマイナス化は終わらない?

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日本国債が買われる三つ目の理由は、国内銀行の担保需要だ。銀行は日々の取引で資金が余ったり、不足したりする。その資金のやり取りをする際に担保とされるのが流動性の高い国債。ヘッジ会計やデリバティブ取引における担保としても使われる。こうした担保需要は都市銀行と地方銀行合計で40兆~60兆円ぐらいあると石井氏は目算する。

これら三つの要因により、金利のマイナス化が続いたが、1月下旬にはマイナス金利はほぼ解消された。きっかけは、円調達コストのマイナス幅が縮小し、海外投資家の買いが細り、金利の変動が大きくなったことだ。

こうした金利の上昇=国債価格の下落は、日銀トレードを行っていた投資家に損失を与えたとみられる。「しばらくは日銀トレードによる買いは出てこないだろう」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)。

3月に再び金利はマイナスに転落も

ただ、3月にはECBが量的金融緩和政策を実行、欧州各国債の購入を始める。欧州国債を買いづらくなった投資家は日本国債購入を活発化させるとみられ、再びマイナス金利に陥る可能性がある。

日銀がマイナス金利で国債を買い続けると、そのバランスシートは傷む。SMBC日興証券の末澤豪謙・金融財政アナリストは、「マイナス金利は日銀の政策が持続可能でないことを示している」と見る。異次元の金融政策は日銀内に将来のリスクを積み上げているだけではないか。

「週刊東洋経済」2015年2月14日号<9日発売>「核心リポート05」を転載)

福田 淳 東洋経済 記者

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ふくだ じゅん / Jun Fukuda

『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などを経て編集局記者。

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